ビジネス

タワーマンション 東京五輪後にやってくるスラム化の恐怖

すでに「売り」が優勢になっている中古タワマンも

 世の中で初めてタワーマンションが分譲されたのは、住友不動産が1976年(昭和51年)に埼玉県与野市で建設・分譲した与野ハウスといわれている。

 以降、タワマンは首都圏では湾岸エリアなどの工場跡地を中心に続々と建設され、今や都内でのありふれた光景の一つになっている。

 不動産経済研究所の発表によれば、2004年以降2016年までの13年間に首都圏で供給された超高層マンションは累計で573棟、17万7850戸に及ぶ(2016年は推定値)。同期間に首都圏で供給されたマンション戸数(69万7418戸)の、なんと4戸に1戸が、いわゆるタワマンなのだ。

 この煌びやかな、都市居住の象徴ともなったタワマンであるが、その内部を覗いてみると、タワマンならではの様々な問題が浮かびあがっている。

 タワマンは眺望の良い高層階ほど価格は高くなる傾向にある。地上40階以上になるタワマンともなるとその階層による価格差は著しく、低層階と高層階では分譲価格も坪単価で2倍から3倍になる事例も珍しくない。

 高層階は眺めが良いだけでなく、相続税評価額の圧縮に使う層や中国人をはじめとした富裕層の投資マネーが入り込むことによって、高額で取引される傾向にあるからだ。分譲する側のデベロッパーにとっても、同じ建設費で建てた棟の中で、高層階ほど高値で分譲できるタワマンは利益率の高いドル箱というわけだ。

 その結果、問題となっているのが高層階住民と低層階住民の対立だ。

 昨年10月から12月に放映されたTBSテレビのドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」でも話題になったように高層階セレブリティと低層階の資産格差を背景とした、住民間のいやがらせや子供へのいじめといった住民対立がクローズアップされている。

 高層階の住民からすれば、住宅ローンをたんまり抱えて、「無理くり」入居してきた一般庶民である住民の存在は気に入らない、低層部の住民からみれば、必要のない豪華な共用施設を独り占めして我が物顔でふるまう高層階住民のいやらしさが癪に障るというわけだ。

 しかし、この話はあくまでも現状での話だ。別にお互い「好き」で買ったマンションなのだから入居後の争いなど他人からみればどうでもよい話ともいえる。

 問題はこれからだ。タワマンの高層階は「投資」として買った人が多い。つまり、投資は「入口」があれば、必ず「出口」=売却することによって完結する。湾岸エリアのタワマンを買った多くの外国人投資家は東京五輪が終わるまでに、自分たちの投資を確定させようとする。相続税の節税目的で買った人は当然だが、相続発生後はこの物件に用はない。

 すでにこのエリアの中古マンション市場では、彼らによる「売り」が優勢になっている。新築のタワマンが折からの建設費の高騰により分譲価格がどんどん上がる中、中古市場では「売り逃げ」を図る投資家が繰り出す大量の売り物件で溢れている。

 新築物件への影響は甚大になる。東京五輪後の東京の将来について楽観的な人は少ない。首都圏ですら、今後は人口が減少に向かうことは間違いなく、激しい高齢化社会の到来は首都圏においては、実はこれからが本番と言われている。

 東京がアジアの金融センターになることを唱える政治家は多いが、外国人の金融マンの間ではジョークとしか聞こえないだろう。彼らは口をそろえて「アジアの金融センターはシンガポールあるいは香港」と断言する。

 ということは、東京五輪後に東京タワマン投資の掛場に新たに登場する投資家は少ない。相場は「下げ」となる。もともと東京五輪目当てで上がってきたタワマン高層階相場は、大量の「売り」の出現により暴落するだろう。

 さらに国税庁はタワマンの相続税評価額を見直し、これまで階層差に関わらず一緒だった評価に格差をつけた。相続税対策としての妙味も減じられてしまったタワマンの高層階をあえて高い価格で買おうとする人は激減するだろう。

 この相場下げの影響は、本来は高層階とは縁のないはずの低層部の住戸の中古相場の足を引っ張ることにもなるだろう。

 ここまではこれから数年間の話。そして大問題が、東京五輪以降で顕著になるタワマンの大規模修繕問題の話である。

関連キーワード

関連記事

トピックス

違法賭博胴元・ボウヤーが激白した「水原と大谷、本当の関係」
《大谷から26億円送金》「ヘイ、イッペイ。翔平が前を歩いてるぜ」“違法賭博の胴元”ボウヤーが明かした「脅しの真相」、水原から伝えられていた“相棒の素顔”
NEWSポストセブン
2022年にHKT48を卒業した松本日向
【ボートレース全国24場を踏破】元HKT48・松本日向が語る「趣味→仕事」の楽しさ「負けすぎて『ギャラないじゃん!』ってことも」
NEWSポストセブン
大谷の口座から26億円を受け取った胴元・ボウヤーが独占取材に応じた(Aflo)
《独占スクープ》大谷翔平の26億円を騙し取った“違法賭博の胴元”が告白!「水原一平、エンゼルスとの本当の関係」【蜜月ポーカー写真の存在】
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKIが結婚することがわかった
《父・水谷豊は1人娘の背中をそっと押して》女優・趣里と三山凌輝、結婚発表の直前まで続いていた母・伊藤蘭との「家族会議」
NEWSポストセブン
比例でトップ当選を果たした石井章氏に浮上した“税金還流疑惑”(写真/共同通信社)
秘書給与不正受給疑惑の石井章・参院議員 2022年には“ファミリー企業”や“幽霊会社”への税金還流疑惑も
NEWSポストセブン
今年もMVPの最有力候補とされる大谷翔平(写真/Getty Images) 
《混迷深まるハワイ別荘訴訟》「大谷翔平は購入していない」疑惑浮上でセレブ購入者の悲痛、“大谷ブランド”を利用したビジネスに見え隠れする辣腕代理人の影
女性セブン
志穂美悦子との別居が報じられた長渕剛
《長渕剛・志穂美悦子についに別居報道》過去の熱愛スキャンダルの時も最後に帰った7億円豪邸“キャプテン・オブ・ザ・シップ御殿”…かつては冨永愛が訪問も
NEWSポストセブン
学校は誠実な姿を生徒たちに見せることができるだろうか(HPより)
《ゴルフの名門・沖学園高等学校で複数の暴力事案が発覚》激怒した寮長の投げた金属製コップが生徒の目元に直撃…流血で数針縫うケガ
NEWSポストセブン
死因は上半身などを複数回刺されたことによる失血死だった(時事通信フォト)
《神戸女性刺殺》谷本将志容疑者が被っていた「実直で優秀」という“仮面” 元勤務先社長は「現場をまとめるリーダーになってほしかったくらい」と証言
週刊ポスト
「部員は家族」と語ってきた中井哲之監督だが…(時事通信フォト)
“謝罪なし対応”の広陵高校野球部、推薦で入学予定だった有力選手たちが進路変更で大流出の危機 保護者は「力のある同級生が広陵への進学をやめると聞き、うちも…」
週刊ポスト
還暦を過ぎて息子が誕生した船越英一郎
《ベビーカーで3ショットのパパ姿》船越英一郎の再婚相手・23歳年下の松下萌子が1歳の子ども授かるも「指輪も見せず結婚に沈黙貫いた事情」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
「週刊ポスト」本日発売! 大谷翔平「賭博トラブル」の胴元が独占告白ほか
NEWSポストセブン