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消化管の難病「クローン病」は抗TNFα抗体製剤が有効

クローン病は日本でも増加の一途をたどっている

 クローン病というのは、ヨーロッパやアメリカなどの白人に多く発症する病気で、1960年代初頭の日本では、クローン病の症例報告がなかった。しかし、1960年代半ばに発症が確認され、その後は増加の一途で、現在は6万人前後の患者がいると推計されている。発症原因は不明だが、食生活やライフスタイルの欧米化が関連しているのではないか、といわれている、

 10~20代の若年層で発症のピークがあるが、主な症状が下痢や腹痛などで特異性が低く、学童期で神経質な時期であることにより、過敏性腸症候群と診断され、長く放置される場合もある。さらに下痢で栄養が取れず、身長が伸びないなどの成長障害を起こす例もある。

 東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科の鈴木康夫教授に話を聞いた。

「下痢・腹痛といった同じような症状を起こす潰瘍性大腸炎は血便を伴うのに対し、クローン病は目に見える血便は少ないという差があります。血液検査で、全身性の炎症反応や貧血、低たんぱく血症が認められた場合はクローン病を疑い、内視鏡やX線、そして、最近ではCT、MRIを応用した画像検査で診断します。中には虫垂炎と思われ手術したところ、クローン病が発見されたこともあります」

 重症例では腸が狭窄し、孔が開いたり、腸が子宮や膀胱など他の臓器と癒着してトンネルになる瘻孔(ろうこう)が起き手術となる。一度手術をすると、そこからクローン病を再燃し、何度も手術を繰り返す。

 10代で発症する、全身に高度の炎症反応がある、肛門に重篤な病変がある、突然腸が破けて緊急手術をする、など複数の症例を持つ患者は、その後も重症化しやすい。

 30年ほど前には妊娠・出産した患者が学会で報告されたことがあるほど、誰にでも発症のリスクがあり、以前の治療は炎症を抑えるステロイド投与や入院しての絶食などであったため、学業や仕事に影響を生じる病気だった。

 それが2002年に、抗TNFα抗体製剤がクローン病で承認され、劇的に症状が緩和した。免疫細胞が作り出すサイトカインのTNFαが過剰に産生されると体のあちこちに炎症が起こるのだが、この炎症を抑制するのが、抗TNFα抗体製剤だ。

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