シャープは2017年3月期の業績が大幅に改善する見通しで、東証一部への復帰も間近と見られる。このV字回復を主導したのが、親会社となった鴻海から送り込まれた戴正呉社長だ。家電業界を長年取材する立石泰則氏がレポートする。
* * *
二〇一七年三月十三日、「社長懇談会」が堺市の臨海エリアにある新本社で開かれた。二〇一六年度連結業績の通期見通しが、営業利益、経常利益、最終利益とも四ケタの赤字を計上して前年同期と比べて大幅に改善していた。
しかし懇談会を通じて、少し不安を感じたことも事実である。たとえばシャープの将来像を、家電メーカーから《「人に寄り添う」IoT企業》と規定していることだ。正直、このスローガンから具体的なイメージがわかない。
会場の記者からも「よく分からないから、詳しい説明が欲しい」という要望が出た。ひと目みて理解されないスローガンなど意味がない。説明が必要なのは、作った側も理解できていないからだ。
ということは、シャープの将来像が経営陣の間で共有されていないのではないか。戴社長を始め経営陣の考えが明瞭なのは、数値目標などを掲げた実務に限られるのだ。その意味では、戴政権の経営は管理業務に徹している。
戴社長は自分のミッションについて、債務超過に陥ったことで東証二部に指定替えになったシャープの一部復帰と、後継社長の育成の二つを挙げている。東証一部に復帰した段階でシャープ社長を退くというものだ。