ネットでは、日々詐欺師が暗躍しており、多額の被害が日本全国で発生している。本誌記者と架空請求サイトとのやり取りを実録再現しよう。
ある動画サイトの〈再生〉ボタンをクリックしたところ、記者の目に飛び込んできたのは、動画の上にある〈登録が完了しました〉、〈ご利用料金19万8000円〉の表示。無料を騙った架空請求サイトだったのだ。
〈誤作動による登録はお電話の上、退会申請、キャンセルを行なってください〉とあり、デカデカと電話番号が載っている。
こうした表示は無視するのが鉄則だが、この業者に電話したらどうなるのか。記者はあえて“体験”してみることにした。
電話をかけると「はい、サポートセンターです」と男性の担当者が出た。声色は30代だろうか。ハキハキとしたビジネスマン風の口調である。
以下は彼との一問一答だ。
──無料動画を観ようと思って再生しただけなのに誤って登録してしまったようで……退会したいのですが。
「はい。わかりました。えぇっと、当サイトは有料になります。事前に〈料金をいただきます〉というお知らせをしていたはずですが、読んでいただけなかったのですかね」
業者に示されたサイトの隅を見ると、小さな文字で〈180日間30万円〉と書かれていた。
──小さな文字だから気がつきませんでした。
「字が大きい、小さいの判断は人それぞれですから。お客様自身で操作をしたんでしょ?」
──えぇ、まぁ……。
「ね! だったら自己責任の範囲内となります。お客様が登録した時の状況を確認しましたが、誤作動によるトラブルや異常も見受けられませんでしたから、料金のご精算が必要ですねぇ」
──でも入会には承諾していません。
「いやいや、それはお客様の過失ですよ」
ここまで業者の口調は穏やかで淡々としている。