◆スッポンの粉末入り
1年間に発売されるカップ麺の新製品は何と450種類を超える(リニューアルを含めれば約670種類)。そのうち、翌年まで生き残るのはたった数%という激戦区。しかも、シニアを相手に一人勝ちというのだから、噂のカップ麺を食べてみないわけにはいかない。
お湯を入れて3分。「カップヌードルリッチ 贅沢とろみフカヒレスープ味」の蓋を開けると……とろりとしたスープ。オイスターソースのこくと香りが、グンと立ち上がってくる。麺を箸で引き上げると、スープがねっとりとからみついてきて、中華料理の「フカヒレ」のイメージとピタリ重なりあう。
「フカヒレという食材は食感が特徴的ですが、味自体はさほどないんです。だからスープの味をどう作りあげるか、が最大のポイントでした」と同社マーケティング部・ブランドマネージャーの藤野誠氏(47)は言う。
「有名店を食べ歩いてスープの特徴や味のイメージを掴み出し、商品設計を固めていきました。最終的にはチキンとポークを土台にし牡蠣のうまみを加え濃厚な中華風に仕上げました。フカヒレの食感は、実はゼラチンで表現しています」
その「フカヒレスープ味」と共に発売されたのが「スッポンスープ味」。
「こちらは実際にスッポンを乾燥させた粉末が入っています。スープの方は鰹のうまみのある和風の出汁にショウガを利かせました」
スッポン粉末入りとは何とも強烈。業界でもカップ麺の「スッポン味」は初めてとか。 その響きからつい、脂ぎった男性向け滋養強壮剤を連想してしまうのですが……。
「ええ、たしかにちょっと手に取りにくいのでは、という意見も社内にありました。ところが調査していくと意外なことがわかったんです。美肌やアンチエイジングに良いと女性の間で認知されていて、実はスッポンのサプリメントが非常に売れていたのです」
フカヒレにスッポンとゴージャスさを前面に出した画期的新商品「カップヌードルリッチ」は発売1か月で600万食を突破した。
「ターゲットの60代に加えて50代の男性層の支持もいただくことができました」
その半年後には「牛テールスープ味」も発売。希望小売価格は230円と通常より50円も高い。値段はブレーキにならなかったのでしょうか?
「50円余分に出すに値する味、と納得いただいた結果が数につながったのだと思います」