今年、高カカオチョコレートに関する研究発表でもっとも大きな話題を集めたのは、1月に行われた菓子メーカーの明治と内閣府の大型研究プロジェクト「革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)山川プログラム」の共同記者発表だろう。
発表内容は「高カカオチョコを食べると大脳皮質の量が増加し、学習機能を高める可能性がある」というもの。「カカオ成分70%以上の高カカオチョコレートを4週間に渡り、成人が毎日摂取したところ、大脳皮質の量が増えた」ことが確認されたといい、ネットメディアなどは「脳の若返り」と見出しに打った。
しかしこの発表を取り上げたのは、一部のネットメディアのみ。科学部などを持つ大手の紙メディアはほぼ黙殺した。そればかりか1月24日付の「日経産業新聞」は「「高カカオのチョコ食べ、脳が若返る」──仮説段階、国の発表に疑問」とこの発表に対して懐疑的な視線を向けた。
記事では「問題は論文に投稿して第三者の査読を受けていない内容を科学的な成果として発表したこと」「この段階での発表に疑問が残る」とバッサリ。実際、研究ではカカオ成分70%以上のチョコレートを食べた前後の状態を比較していて、カカオの成分量が少ないものや、あるいはないものなどとの比較実験はされていない。
この点については、Twitterで医療・研究系のアカウントから「え、、税金使ってるんだから、二重盲検でやってくださいよ……」、「これが『オープンサイエンス』『イノベーション』というのも、迷惑な話」、「アウトカムが『大脳皮質の量』www」などと総ツッコミ状態。
前出の日経産業新聞の記事でも、脳機能や認知機能との関連データの有無についての質問に、プロジェクトマネージャーは「まだ研究を始めたばかり」と解答。「今後さらに大規模で長期的な実証研究が必要になる。今回あえて中間報告をしたのは、様々な企業や個人を巻き込みながら情報を広く共有し、開かれた科学を目指す試みにするためだ」と続けたという。
高カカオチョコレートの効果に確信があり、「様々な企業や個人を巻き込」むのが目的ならば、もう少し研究を重ね、論拠を積んでからのほうが効果的だったのではないか。バレンタインデーまで1か月を切った時期に無理をして発表をせずとも、有用な内容であれば心ある研究者たちは興味・関心を示すと思うのだが。