話が物騒になってきたところで、車は運転手が「二度と行くか!」と言っていたロッテマート(ロッテグループが展開するディスカウントストア)に到着。
現在、中国人の集中砲火を浴びているロッテマートの入り口付近には警察車両が横付けされ、10人近い警察官が周囲を巡回している。2012年の反日デモで起きた放火や略奪などが再発せぬよう、警戒しているのだ。
広い店内に買い物客はごくわずか。平日の昼間とはいえ、閑散としすぎなのだ。商品の入荷が途絶え、空になったままの棚もある。店員によれば、ロッテのボイコットが中国全土に拡大した2月下旬から、来店客は遠くに行けない近所の老人などに限られるようになり「日に数える程度」まで落ち込んでいるという。
筆者はこのあと北京市内や郊外で複数のロッテマートを取材したが、建物を警察が囲む物々しさ、店内の閑散とした様子はどの店舗も一緒だった。
100店舗近い中国のロッテマートは、3月中旬までに半数の55店舗が営業停止に追い込まれている。当局から「不当な価格設定」を理由に行政処分を受けたり、「消防設備の不備」を指摘され強制封鎖されたりした店舗もある。実に分かりやすい「嫌がらせ」だ。
※SAPIO2017年5月号