ビジネス

ハコモノ脱却目指す飲料自販機 スマホ連動でコンビニに対抗

LINEの出澤剛社長(右)もキリン新自販機に意欲(左は岩田氏)

 自動販売機は「お金を入れて好きな飲料を購入する」当たり前の機能だけでなく、消費者が喜ぶ付加価値をつけて差別化しなければ淘汰される時代に突入した。

 それもそのはず。いま、自販機は全国津々浦々に約245万台(2015年)点在し、その総数は10年前と比べて微減にとどまっているものの、問題なのは販売比率が低下し続けていることだ。

 スーパー、コンビニ、最近では街中のドラッグストアでも気軽に飲料が買えるため、わざわざ自販機の前で立ち止まる人の姿もめっきり減った。そして、ついに自販機経由の販売比率は2015年に30%を切ってしまった。

 そんな苦境にかかわらず、飲料メーカーはいまだに自販機に頼らざるを得ない事情を抱える。飲料総研の宮下和浩氏がいう。

「たとえ自販機1台あたりの売り上げが落ちても、缶コーヒーをはじめ少ない容量の飲料を定価で売ることができるので、全体利益の約6割を自販機から稼ぐことも可能です。これがスーパーやコンビニだと、安売り販売をしたりマージンを抜かれたりするので、なかなか収益が上がらない現状があります」

 そこで、自販機の魅力を高めようと、各社あの手この手のサービスを考案している。共通するのは「スマホとの連動」だ。

 約83万台と圧倒的な自販機シェアを誇る日本コカ・コーラは、昨年4月に自販機と連動させたスマホアプリ「Coke ON」サービスを開始した。

 専用アプリをダウンロードしたスマホを対応自販機に近付けてドリンクを購入すると、スマホが振動してポイントが貯まる仕組みだ。15スタンプを集めるとドリンク1本が無料になるチケットが発行される。すでに同自販機は14万台設置され、アプリDL数は300万を突破したという。

 また、ダイドードリンコも昨年4月よりiPhoneやAndroid向け専用アプリの「DyDo Smile STAND」をスタートさせた。こちらもスマホを自販機にかざすとポイントが貯まり、「LINEギフトコード」や「楽天スーパーポイント」、「スクウェア・エニックスCrystaギフトコード」(ゲームなどオンラインコンテンツの決済に使える)などに交換できる。

 さらに、今年4月からポイント数に応じてトートバックやモバイルバッテリー、ラジコンヘリコプターなどが必ずもらえる「CLUB DYDO」の応募サービスも加わった。同社コーポレートコミュニ-ション部の担当者が、スマホ自販機導入の狙いを語る。

「当社は全国で約28万台の自販機を展開していますが、他メーカーさんと違って自販機の飲料売り上げが85%を占めるほど大事な収益源となっています。

 そこで、自販機の価値を落とさずいかに高めていくかを考えた時、30代以上のヘビーユーザーよりも、生まれた時から当たり前のようにコンビニがあり、店で飲料を買う習慣がある10代、20代の若者たちに何とか振り向いてもらいたいと思いました。若年層と親和性の高いスマホと連動させたサービスを開始したのはそのためです」

 もともと、ダイドーは古くから「当たりつき」の自販機や、全国の方言で音声案内してくれる自販機を導入するなど、ユニークな試みで差別化を図ってきた。今回の取り組みも、自販機ビジネスにかける同社の強い意気込みが感じられる。

 そして、4月13日からキリンビバレッジもスマホ自販機に参入した。国内6600万人の月間アクティブユーザー(2016年12月時点)を持つLINEとタッグを組んだ新サービス「タピネス」をスタートさせた。

関連記事

トピックス

解散を発表したTOKIO(HPより)
「TOKIOを舐めるんじゃない!」電撃解散きっかけの国分太一が「どうしても許せなかった」プロとしての“プライド” ミスしたスタッフにもフォロー
NEWSポストセブン
教員ら10名ほどが集まって結成された”盗撮愛好家グループ”とは──(写真左:時事通信フォト)
〈機会があってうらやましいです〉教師約10人参加の“児童盗撮愛好家グループ”の“鬼畜なやりとり”、教育委員会は「(容疑者は)普通の先生」「こういった類いの不祥事は事前に認知が難しい」
NEWSポストセブン
警視庁を出る鈴木善貴容疑者=23日午前9時54分(右・Instagramより)
「はいオワター まじオワター」「給料全滅」 フジテレビ鈴木容疑者オンカジ賭博で逮捕、SNSで1000万円超の“借金地獄”を吐露《阿鼻叫喚の“裏アカ”投稿内容》
NEWSポストセブン
大手芸能事務所の「研音」に移籍した宮野真守
《異例の”VIP待遇”》「マネージャー3名体制」「専用の送迎車」期待を背負い好スタート、新天地の宮野真守は“イケボ売り”から“ビジュアル推し”にシフトか
NEWSポストセブン
「最近、嬉しかったのが女性のファンの方が増えたことです」
渡邊渚さんが明かす初写真集『水平線』海外ロケの舞台裏「タイトルはこれからの未来への希望を込めてつけました」
NEWSポストセブン
4月12日の夜・広島県府中町の水分峡森林公園で殺害された里見誠さん(Xより)
《未成年強盗殺人》殺害された “ポルシェ愛好家の52歳エリート証券マン”と“出頭した18歳女”の接点とは「(事件)当日まで都内にいた」「“重要な約束”があったとしか思えない」
NEWSポストセブン
「父としての自覚」が芽生え始めた小室さん
「よろしかったらお名刺を…!」“1億円新居”ローン返済中の小室圭さん、晩餐会で精力的に振る舞った理由【眞子さんに見せるパパの背中】
NEWSポストセブン
多忙なスケジュールのブラジル公式訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《体育会系の佳子さま》体調優れず予定取り止めも…ブラジル過酷日程を完遂した体力づくり「小中高とフィギュアスケート」「赤坂御用地でジョギング」
NEWSポストセブン
麻薬密売容疑でマグダレナ・サドロ被告(30)が逮捕された(「ラブ・アイランド」HPより)
ドバイ拠点・麻薬カルテルの美しすぎるブレイン“バービー”に有罪判決、総額103億円のコカイン密売事件「マトリックス作戦」の攻防《英国史上最大の麻薬事件》
NEWSポストセブン
広島県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年6月、広島県。撮影/JMPA)
皇后雅子さま、広島ご訪問で見せたグレーのセットアップ 31年前の装いと共通する「祈りの品格」 
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一(50)。地元でもショックの声が──
《地元にも波紋》「デビュー前はそこの公園で不良仲間とよくだべってたよ」国分太一の知られざる “ヤンチャなTOKIO前夜” 同級生も落胆「アイツだけは不祥事起こさないと…」 【無期限活動停止を発表】
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン