止むなく母は父に事情を話し、父は祖母を背負って車に乗せ、病院へ。しかし時すでに遅し。祖母はそのまま帰らぬ人になりました。

「余計なこと、言うんじゃないよ」

 母に言われるまでもなく、この時の話を私は人にしたことがありません。

◆祖母のお骨の行方を知ったときの恐怖

「なぜここまで放っておいたの?」と医師に聞かれた母は、「がまん強い人で、何も言わなかったので」で通しました。

 父はうすうす祖母の同居に気づいていたのかもしれません。さすがにこのときのことでは、母は「あんたが悪い」と父を責めませんでした。

 かと言って、実母を押し入れに入れた自分が死に追いやった、という意識がどれだけあったか。私の知る限り、母は一粒の涙も流しませんでした。

 強烈に覚えているのは、きょうだいに祖母の死を知られても、「あんたたちには関係ない」と、とうとうお葬式を出さなかったこと。お墓も作らず、骨壺は風呂敷で包んで台所の片隅に置きっぱなし。しばらくたつとそれもどこかに消えていました。

 母に聞くと、「ああ、ごみの日に捨てた」とサラッと言ったあとまた、「余計なことは、言うんじゃないよ」と釘を刺されました。

 実の母親の骨をどうしてこんなに粗末にできるのか。私は無言で母の背中を睨にらみつけて泣いていました。

 そして子供の頃から、母が近づいてくるだけで恐怖で身を固くしていた理由が、このときはっきりとわかったのです。この人は普通の感情を持った人じゃない──と。
〈次回に続く〉

※女性セブン2017年4月27日号

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