そうした異形の仏像を探ることは、〈名もなき先人たちの祈りを知ること〉〈歴史に残らない信仰文化や思想を再発見していくこと〉〈日本人の美意識のありようを思い出すこと〉だと著者は言うが、その通りだろう。
取り上げられている仏像のほとんどは国宝、重要文化財に指定されるような“由緒正しき”ものではなく、その意味では正統仏教美術史からは外れたものばかりだ。しかし、見る者の好奇心を刺激してやまず、人間は何と豊かな想像力の持ち主なのだろうと思わせてくれる。見ていて飽きず、何度も見返したくなる本だ。
※SAPIO2017年5月号