ひとくちにお墓と言っても、その内実はさまざまだ。私たちが当たり前のようにイメージしていた外墓に代わって、今、急速に増えている室内墓。その中には「動くお墓」と「動かないお墓」がある。「動くお墓」は、お参りの場で待っていると墓が移動してきて故人を偲べるもの。今回紹介するのは「動かないお墓」。ノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。
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ここ10年ほどの間に、とりわけ東京で急増した「室内」のお墓(納骨堂)の形式は、卑近な言い方をすると「動くお墓」と「動かないお墓」に二分される。前者は参拝ブースに設置した共用の墓石の中に、保管庫から骨壺が自動搬送されてくる形。後者は墓石は用いず、仏壇やロッカーなどに骨壺が保管される形だ。
私にはお墓とはお寺の境内や霊園の地面に建つものというイメージしかなかったため、取材当初はいずれも斬新に映ったが、もう慣れてきた。
30余年前、この仕事を始めた頃は原稿は手書きだった。それが、ワープロになり、パソコンになって、もう何年になるのか。「そんなものを使うと、思考の回路が崩れる」といわれたのは、とんと昔のことだ。
誰もが便利さを認め、わが業界で手書き原稿がほぼ流通しなくなって久しいが、かといって日常の暮らし等のシーンでの手書きはなんら変わらない。ふとそんなことも思いながら、お墓巡りを続ける。
「動かないお墓」の2回目。今回訪ねたのは、驚くべき価格のところだ。
ブランドショップが並び、おしゃれな人たちが行き交う東京・青山。その一角に佇む4階建ての実相寺は1634年創建の臨済宗のお寺だが、堂内「青山霊廟」に「特別壇」と称する、なんと600万円の仏壇型のお墓があった。
東京のお墓の最高峰とされる青山霊園の価格(1.6平方メートル437万6000~4平方メートル1094万円=昨年度)と肩を並べる高額ですね…と、開口一番つい言ってしまった。
「お墓は、場所や雰囲気やサービスを考え合わせないと、高いも安いもないと思いますよ」
青山霊廟の販売を担当するせいざん株式会社社長の岩田貴智さん(45才)に、やんわりとたしなめられ、とにもかくにもエレベーターで3階に上がり、見せてもらう。本堂が2011年に建て替えられた時に設置されたという50平方メートルほどの納骨堂は、荘厳でもあり、明るくもあった。
代々木の寺院で、初めて「動かないお墓」が並ぶ納骨堂に入り、凜とした空気に気圧されたが、堂内全体を見守るという薬師如来が鎮座し、ここも引けをとらない。一方で明るく感じたのは、彼岸から幾日も経たないその日、供花が多かったためと、ロッカー壇の表面一面に桜やもみじの絵がカラフルに描かれていたためだろう。
そのような中、まるで「仏壇」のように見える形のものに、ひきつけられた。それが600万円の「特別壇」だ。幅は62cm。人ひとりが立つといっぱいのサイズだが、高さは2m近くあろうか。