テレビ朝日が、夜の生放送に挑むもう1つの理由は、録画視聴が増えたことへの対策。視聴率を獲得するためには「リアルタイムで見てもらう」ことが絶対条件であり、それには生放送がいいというわけです。
一方、視聴者から見た生放送のメリットは、「テレビを通して芸能人たちと今、同じ時間につながっている」と感じられる一体感。テレビ画面の中にいる芸能人と同じタイミングで笑い、クイズなら好きな芸能人を応援し、失敗したら一緒にガッカリするなどの楽しみが得られますし、思わずツイッターに書き込みたくなる人もいるでしょう。また、「スタッフの判断でコメントやギャグがカットされることがない」ため、好きな芸能人のありのままの姿を見られるのもうれしいところです。
このような生放送ならではのライブ感を生み出すためには、相当な努力と覚悟が必要。出演者は台本を完璧に叩き込むだけでなく、アドリブ力を磨かなければならず、スタッフは入念なリハーサルに加え、不測の事態に備えておかなければいけません。そんな努力と覚悟が何となく分かるからこそ視聴者は、「生放送はリアルタイムで見よう」という気持ちが持てるのではないでしょうか。
中居さんが、「もっとテレビが面白くなるために」と生放送にかける思いを明かしていたように、「生放送をリアルタイムで見てもらうのが一番面白い」という考え方は、テレビ放送の原点。テレビ朝日の果敢なチャレンジが実を結び、他局が追随するような展開になれば、視聴率の低迷が叫ばれるテレビ業界に活気が戻ってくるかもしれません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。