茶人・千利休の高弟である戦国武将・細川忠興は、その教えを厳格に追求していた。そんな忠興を敬っていた嫡男・忠利は、父に直接手紙を送ることを遠慮し、父の側近に送る「披露状」という手法をとっていた。江戸時代に入ってからの父から息子宛ての手紙は1820通、父親宛ての手紙控えは1084通残り、貴重な史料となっている。
その中には息子が送り届けた食べ物に対する礼状も数多く、「松茸は好物だ」と喜ぶ手紙がある一方、届いた焼き鮎に「焼き方がなっていない。鮎はからりと焼き、水気を飛ばすのが正しい」と調理法に文句をつける手紙もあり、忠興のグルメな一面がうかがい知れる。魚介類では鮎のほか、鮭、海鼠腸、鮑、筋子、ふぐなども好物だったようだ。
■取材・文/小野雅彦
※週刊ポスト2017年5月5・12日号