世紀が変わると、「茶」に求められる”健康的役割”が明確になった。その象徴が2003年に花王から発売された「ヘルシア緑茶」。「特定保健用食品(トクホ)」として唯一「エネルギーとして脂肪を消費しやすくする」の許可表示を受けた。これに続いたのが2006年の「サントリー黒烏龍」。ポリフェノール成分を強化し、腸管からの脂肪吸収を押さえ、食後の中性脂肪を押さえながら、脂肪の排泄も促すというトクホアイテムだ。その後も、水溶性食物繊維入りのトクホ茶飲料などが各社から続々発売され、現在に至っている。
ここ最近のトレンドとして目を引くのは「ほうじ茶」だ。伊藤園が3月に発表した2016年5月~17年1月期の連結決算でも、冬場に好調だった「絶品ほうじ茶」がけん引する形で日本茶飲料の売上高が3%伸びたという。ブームになる兆しもあり、ハーゲンダッツがアイスクリームのフレーバーとして「ほうじ茶ラテ」を採用したところ、コンビニ等で売り切れ続出。惣菜も含めた冷凍食品のランキングでぶっちぎりの1位に。そのほか「ほうじ茶ラテ」フレーバーのブッセが発売されるなど、スイーツ市場にもほうじ茶人気の影響が出始めている。
そのほうじ茶、実は茶の種類としての歴史は意外と浅い。さかのぼって調べたところ、「ほうじ茶」の記述が確認できたのは1904(明治37)年の「焙茶余馥」(著・伊藤石太郎)くらい。過去の朝日新聞をひっくり返してみても、1924(大正13)年の東京版に株式会社伊藤製茶部の「社會ほうじ茶」という広告出稿があったのが最古で、「ほうじ茶」に言及した記事となると1941(昭和16)年と、1981年(昭和56)年に軽く触れた記事があるが、真正面からほうじ茶を扱った記事となると1988(昭和63)年の東京朝刊くらいしか見当たらない。
香ばしいのに、渋味や苦味が押さえられたやさしい口当たり。料理店でも食中茶として提供されることからもその飲用シーンの幅広さは折り紙つき。
「ブーム」の仕組みはさまざまある。近年のレモンサワーのように、消費者の嗜好が積み重なってブームへと発展するケースもあれば、企業の仕掛けが引き金となってトレンドに拡大することも。ほうじ茶が茶飲料界の主役を狙っても、決して無茶とは言えない。それほどまでに、茶飲料群雄割拠の時代なのだ。