日本茶(緑茶)や紅茶は、急須やポットに茶葉とお湯を入れれば簡単に抽出できるのに、コーヒーはドリッパーやフィルターが必要になる。急須と同じような構造のポットではダメなのだろうか…。
そんな素朴な疑問から生まれたのが、コーヒー用の「マイカフェポット」(中:最大幅約14×上部直径9×高さ14cm 容量約350ml 重さ約540g 9720円)。開発したのは、滋賀県甲賀市で信楽焼(しがらきやき)の食器や急須などを作っている『紫香陶房』の小西啓吾さんと息子の晃さんだ。
「急須の製造は得意分野でしたので、初めは簡単に考えていました。しかし、緑茶や紅茶の葉と、コーヒー豆を挽いた粉の大きさは全然違う。茶こしにコーヒーの粉を入れてお湯を入れたら、粉が流れ出てしまいました」(小西晃さん、以下同)
そこで小西さん親子は、できるかぎり穴を小さくしようと改良に取りかかる。試行錯誤の末、道具や角度を調整し、今の大きさにたどり着いたものの、今度は穴が小さすぎて、粗めに挽いたコーヒーの粉が穴に詰まってしまった。
「どうすることもできずに無理かと思い始めたとき、気づいたんです。大きな穴だと細かい粉は流れ出てしまうけれど、コーヒー自体は抽出できる。一方、小さな穴ではコーヒーが茶こしに詰まってしまう。それなら、両方の良いところを採用しようと…」
まず、大きめの穴を開けた内蓋で、粗い粉をこしながらコーヒーを抽出。さらに外蓋に開けた小さな穴で、細かい粉をこすという、“二段こし方式”を生み出し、2011年に第一号が誕生した。
「紙のフィルターを使わないため、コーヒーの持つ旨み成分(油分)が抽出できて、さらに味わいが深くなります。また、金属を使っていないため、余計な雑味も出ません。コーヒー豆本来の味を味わいたい人に、ぜひ使ってもらいたい。
1つにつき、約1000個の穴も手作業で開けています。この小さな穴が詰まらないように、釉薬(ゆうやく)のかけ方も工夫しています」
2011年からのモニター販売を経て、今年から本格的に生産販売。現在までに約600個を販売。特許第5563929号。ポットは陶器製で、保温性が高いのも魅力だ。
※女性セブン2017年6月1日号