「料理人の僕が包丁を握れなくなったため、数日後に開店するはずが延期になり、翌年には手放しました」
松島氏が問題視するのは事故後のイケアの対応だ。イケアは、公的機関が事故の原因を特定するまでは治療代などは一切支払えないという強硬な姿勢だった。
国民生活センターは2013年6月、「苦情品の軸受けは、座面を支える軸受け内部のねじ部の上端部付近で破断していた」と結論付けた。
それと並行して、松島氏は独立行政法人の製品評価技術基盤機構(NITE)にも調査を依頼していた。NITEは2014年6月、問題の製品に脆弱性があったため座面が落下したことを認める報告書をまとめている。また、同じ製品による、事故と負傷は2件目となることも報告している。
ところが、公的機関が製品による事故を認めたにもかかわらず、イケアは治療代などの支払いを拒否した。その結果、松島氏は2015年1月、4200万円強の損害賠償を求めて裁判を起こす。
イケアは松島氏の誤使用を主張。体重100キロまでの製品に当時102キロの松島氏がイスを使用したため事故が起きたのだ、と。しかし、実物にはイスの座面の裏側に100キロの錘(おもり)の絵柄があるだけで、100キロ以上の人が座るのは危険という説明文は一切なかった。