国内

「散骨が自然に一番優しい」説に樹木葬の名付け親が異議

自然を守りエコ的に土地利用をとのアイディアから生まれた樹木葬

 昨今、「室内墓」とともに新しい埋葬の形として「樹木葬」が大きな注目を集めている。しかし、その内容はさまざまなことをご存じだろうか。ノンフィクションライターの井上理津子さんは、樹木葬の名付け親、先住職の千坂げんぽうさん(72才)が待つ、岩手県一関市の臨済宗・祥雲寺へ。樹木葬墓地を管理する祥雲寺の子院・知勝院「生きもの浄土の里」へ。骨壷は使わず遺骨をじかに穴の中に埋葬し、その上部に木を植えるという樹木葬について、リポートする。

 * * *
 樹木葬墓地とその周辺を巡ること、1時間。「リフレッシュさせていただきました」と、つい妙な感想を口にしてしまった私に、千坂さんはにんまりした。

「それはよかった。ここは、樹木葬のための里山ではなく、里山の自然再生のための樹木葬ですから」

 千坂さんから聞いた「間伐し、下草を刈り、落ち葉をかき、もうすぐ20年」という言葉を思い出したが、今ひとつ意味がわからない。樹木葬を考案された経緯を教えてください――。

「1990年頃から地域づくりの活動をしていた中、全国の丘陵地や里山が墓地開発で破壊されていくのに心を痛めていたんです。豊かな自然を次世代に継承するにはどうすればよいのかと考えていた、ちょうどその頃『葬送の自由をすすめる会』が立ち上がって、いわゆる散骨が始まった。『散骨が自然にいちばん優しい葬送方法』という主張に、いや、違うだろうと。自然を守り、エコ的に土地を利用する手段として、樹木葬のアイディアがひらめいたんです」

 かつては土葬が標準だった。東北地方で「死して魂は山に還る」と語られるのも、土葬文化ゆえだったろう。土葬の延長として、「火葬骨」を埋葬する方法が、民俗学的にも理にかなっている。「樹木を目印に、コンクリートも墓石も使わないエコな墓」をつくりながら自然を守ろう。そう発想したと、千坂さんは言う。

 この里地里山は、1994年に「自然体験研修林」として久保川(北上川系磐田川の支流)流域部分の山林を購入したのを皮切りに、徐々に買い足してきたもの。その一部が、行政から認可された樹木葬墓地にあたる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン
2025年10月末、秋田県内のJR線路で寝ていた子グマ。この後、轢かれてペシャンコになってしまった(住民撮影)
《線路で子グマがスヤスヤ…数時間後にペシャンコに》県民が語る熊対策で自衛隊派遣の秋田の“実情”「『命がけでとったクリ』を売る女性も」
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
文化勲章受章者を招く茶会が皇居宮殿で開催 天皇皇后両陛下は王貞治氏と野球の話題で交流、愛子さまと佳子さまは野沢雅子氏に興味津々 
女性セブン
各地でクマの被害が相次いでいる(右は2023年に秋田県でクマに襲われた男性)
「夫は体の原型がわからなくなるまで食い荒らされていた」空腹のヒグマが喰った夫、赤ん坊、雇い人…「異常に膨らんだ熊の胃から発見された内容物」
NEWSポストセブン
雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
【天皇陛下とトランプ大統領の会見の裏で…】一部の記者が大統領専用車『ビースト』と自撮り、アメリカ側激怒であわや外交問題 宮内庁と外務省の連携ミスを指摘する声も 
女性セブン
相次ぐクマ被害のために、映画ロケが中止に…(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
《BE:FIRST脱退の三山凌輝》出演予定のクマ被害テーマ「ネトフリ」作品、“現状”を鑑みて撮影延期か…復帰作が大ピンチに
NEWSポストセブン
名古屋事件
【名古屋主婦殺害】長らく“未解決”として扱われてきた事件の大きな転機となった「丸刈り刑事」の登場 針を通すような緻密な捜査でたどり着いた「ソフトテニス部の名簿」 
女性セブン
今年の6月に不倫が報じられた錦織圭(AFP時事)
《世界ランキング急落》プロテニス・錦織圭、“下部大会”からの再出発する背景に不倫騒と選手生命の危機
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン