「船は古いが内装もきれいで快適。ウォッカを並べた売店があり、食堂では中華料理が出ました。北朝鮮の乗員が40人ほどいたが、全く話をしませんでした」
ターミナルでは、金日成・正日親子のバッジをつけた北朝鮮の総領事代行と若い領事の姿も見えた。北朝鮮がこの航路開設に力を入れるには訳がある。
「核ミサイル開発をめぐる緊張に伴い急速に中朝関係が悪化するなかで、北朝鮮にとって中国に代わる石油などの調達先を確保することは死活問題。そこでロシアとの関係強化を進めようということでしょう。プーチン大統領にとっても北朝鮮との関係拡大は米中を揺さぶる大切なカード。ロシア当局が航路開設を許可したのはそのためだと見るべきです」(日本政府関係者)
韓国当局のまとめによると、露朝間の貿易額は中朝間の67分の1にとどまるが、近年は石油関連の貿易が増える一方だという。
さらにロシアは北朝鮮から約5万人もの出稼ぎ労働者を受け入れ、貴重な外貨獲得源となっている。ウラジオストク市内ではあちこちの建設現場で彼らが働く姿が見かけられた。
この極東の港が北朝鮮の延命の生命線となりつつあるのだろうか。
※SAPIO2017年7月号