金日成一覧

【金日成】に関するニュースを集めたページです。

プロジェクトは実現するのか?
北朝鮮労働党中央軍事委が軍に戦略物資の点検指示 戦闘準備態勢へ
 北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会は3月中旬、陸海空軍部隊と道(日本の県に相当)や市など民間防衛部門に対して、「いかなる状況にも迅速に対応でき、本格的な戦闘準備態勢を整えるため、戦略物資の点検を行わなければならない」と指示し、軍部隊には弾薬、装備品、食糧の備蓄を、各地域の民間防衛部には保管している食糧、医薬品、タイヤなどの緊急物資を早急に点検し、中央軍事委に報告するよう求めていることが明らかになった。 これは、韓国で対北朝鮮強硬路線をとる保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏が次期大統領に決まったことで、北朝鮮の金正恩指導部が韓国との戦闘状態入りを想定していることが背景にあるとみられる。とくに、4月は金氏の最高指導者就任10周年や金日成主席の生誕110周年などの重要な記念日が集中していることから「北朝鮮の軍事挑発の程度によっては朝鮮半島情勢が激動しそうだ」と韓国の代表的な通信社「聯合ニュース」が報じている。 北朝鮮の安全保障問題に関わる情報筋が米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」に明かしたところでは、「韓国の次期大統領に尹氏が就任することや、ロシア軍のウクライナ侵攻、それに伴う米欧諸国とロシアの対立など国際情勢がますます悪化していることや、米朝間の軍事的対立が鋭くなっていることなどに対応し、わが国(北朝鮮)の最高指導部は国防力を強化する必要がある」と指摘した。 また、指導部が軍事物資や食料などの緊急備蓄物資の点検を指示したことについて、民間防衛部門関係者は「4月は11日が金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)が2012年の党代表者会で党第1書記に推戴されてから丸10年になる記念日だ。その2日後の2012年4月13日は最高人民会議(国会に相当)で統治機構の最高位の国防委員会第1委員長に推戴され、金正恩体制の正式な発足を告げた記念日。さらに、15日は故金日成主席の生誕110年の節目に当たることから、国威を発揚するため、戦闘の体制を整える必要がある」と語っている。 このため、聯合ニュースは「北朝鮮は主な記念日の5年、10年の節目に合わせて軍事挑発などで情勢を緊迫させ、体制の結束を図るとともに対外メッセージを発してきた。特に節目の記念日が多い今年の4月はいつにも増して朝鮮半島の緊張が高まる恐れがある。韓国軍当局は米国と共に両国の偵察資産(兵器)をフル稼働させるなど対北朝鮮防衛体制の強化に動いている」と指摘し、北朝鮮の軍事的挑発の可能性に警戒を強めている。
2022.04.10 07:00
NEWSポストセブン
英女王の追悼をめぐり様々な意見が
韓国大統領選挙に中国在住の北朝鮮人が釘付け 自由に驚嘆も
 韓国の大統領選は3月9日、保守系野党の尹錫悦氏が当選した。選挙期間中、数万人ともいわれる中国在住の北朝鮮の人々は大統領選の報道に釘付けだったという。候補者同士が自由に現職の大統領や歴代大統領を批判でき、国民1人1人が自分の国を導くのに最適な人物を選ぶことができることに驚きを隠し切れない状況だったことが分かった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 今回の韓国の大統領選は尹氏と革新系与党の李在明氏の事実上の一騎打ちとなったが、立候補者は全部で14人が登録されていた。一方、北朝鮮でも政府のさまざまな役職の選挙が行われているが、選挙では事前に承認された1人の候補者のみになる。 これについて、北朝鮮の丹東市出身の貿易機関関係者は、韓国でこれほど多くの人々が大統領選に立候補しているのには正直、驚いたし、それぞれの大統領候補が公の場で演説して、自分の思うところを堂々と主張できることにも、うらやましさを通り越して、呆れてしまった、と語ったという。 また別の北朝鮮人はRFAに対して「14人もの人々が大統領選挙に立候補することは、わが国(北朝鮮)では全く考えられないし、ありえないことだ。わが国の最高指導者の選挙も韓国と同じように行うべきだ」などと述べて、北朝鮮の政治体制がいかに世襲独裁であるかを強調していた。 北朝鮮から中国遼寧省にある北朝鮮系貿易機関に派遣されていると北朝鮮の職員はこう語っている。「わが国では最高指導者の選挙はなく、これまで3人の世襲統治者しかいなかった。最高人会議(国会に相当)を筆頭にしたあらゆる選挙でも、それぞれの住民は党幹部から、あらかじめ決められた候補者に投票するように命令されている。 韓国のように自由に候補者を選ぶことができる権利はないに等しい。これからは、民主的な投票プロセスによって指導者を選ぶことができるようになるといいのだが、それが現実となるときは、白頭ライン(金日成主席の子孫)の独裁体制が滅びる時だろう」「白頭ライン」とは、「国祖」金日成主席の子孫を指す。中朝国境にある白頭山は、朝鮮半島最初の神話上の人物である檀君が生まれた場所として、朝鮮文化の中で神聖視されている山である。
2022.03.19 07:00
NEWSポストセブン
プロジェクトは実現するのか?
金正日生誕行事に続き金日成生誕行事も 疲弊する北朝鮮兵士に募る不満
 北朝鮮の朝鮮人民軍兵士らはこれまで冬季軍事訓練とともに、2月16日の金正日総書記の生誕80周年記念の祝賀行事などを終えたばかりで、心身とも極度に疲労しているという。しかし3月に入ってからも、4月15日の金日成主席の生誕110周年記念日の準備に追われており、「我々が必要なのはしっかりとした食事と休養だ」との不満の声が軍内で強まっていることが明らかになった。 首都平壌では軍や党幹部の居住区のマンションの壁に「金正恩、お前のせいで国民が餓死している」などと書かれた落書きが見つかっており、軍指導部内では一部軍将兵らの暴発に警戒が高まっているという。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。 金正恩氏の祖父である金日成主席(1912-1994)の誕生日は「太陽節」として知られ、連休となっている。正恩氏の父の金正日総書記(1942-2011)は2月16日生まれで「光明星節」の記念日となっており、両者の誕生日にはいずれも大型の慶祝行事が行われるのが恒例だ。 今年1月には「光明星節」には正恩氏や金日成主席、金正日朝鮮労働党総書記の活動を振り返る写真展が開幕したほか、各地で市民が参加しての慶祝行事が行われた。 平壌の情報筋によると、今年110回目の「太陽節」ではとくに朝鮮人民軍主体の行事が多数計画されており、各部隊で講演会、発表会、出版物の展示、ドキュメンタリー映画の学習会などが行われ、「先人の偉大さと不滅の業績を認識することを目的としている」という。 各部隊の事情によって時期は多少異なるが、2月末から「太陽節」まで『金日成将軍の偉大な姿』、『偉大な歩み』、『先軍革命の逸話』などの各種偶像化図書が各部隊に配布され、連日学習会などが開催されている。 しかし、同筋は「兵士たちはこの新しい思想教育計画に不満を募らせている。兵士たちは年明けから休みなしの訓練で疲れているなか、光明星節のさまざまな行事に参加しなければならなかった。さらに、これから太陽節の慶祝行事の準備をしなければならない」と指摘した。 そのうえで、同筋は「このため、彼らは『いま、自分たちが切実に必要としているのは、革命史の新しいカタログでも、先代指導者の偉大さについての教育でもない。栄養たっぷりの食事と長い休息がほしい』と訴えている」としている。
2022.03.09 07:00
NEWSポストセブン
世界ではどのような不老不死研究が?(イメージ)
IT業界の大富豪が“不老不死ビジネス”に巨額投資 市場拡大への期待
 死や老いに対する恐れから「不老不死」に憧れを抱くのは人間の性だ。すべての権力を手中に収めた独裁者たちも例外ではなく、彼らが最後に求めたのも若さと“永遠の命”だった。 ルーマニアの独裁者、チャウシェスクは、妻エレナの要求で1952年に「国立加齢科学研究所」を設立。アンチエイジング治療の研究所は今も残り、世界中から多くの要人が訪れている。 北朝鮮の金日成も健康長寿に執着し、1976年に「金日成長寿研究所」を設立。10代の処女の血を輸血する“若返り療法”を受けていたとされる。 現代では、IT業界で巨万の富を築いた大富豪が不老不死の研究に投資している。グーグル創業者のラリー・ペイジやセルゲイ・ブリン、フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ、アマゾン創業者のジェフ・ベゾスらが100億円単位の資金を研究に投じている。近年になって老化のメカニズムが徐々に明らかになり、「不老不死ビジネス」が数兆円規模の巨大市場に育つと見込んでいるからだ。 現在、世界中で生体から有毒な老化細胞を排除する“セノリティック薬”の開発が盛んに行なわれている。このほかにも、世界では各国の主要大学が中心となり、さまざまな不老不死研究が行なわれている。 米・マサチューセッツ工科大学(MIT)では、細胞の新陳代謝を促す薬剤を入れたカプセル錠剤を開発。実験で延命効果が認められ、栄養補助剤として市販が始まっている。 カリフォルニア大学のサウル・ヴィレダ准教授は、高齢のマウスに若いマウスの血を輸血する実験を行ない、脳の機能の向上が認められたと発表している。「国内では慶応大学などで、エネルギー代謝で必須だが、加齢とともに減ってくる“NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)”という物質を補うことでヒトの老化を抑える研究をしています。動物実験では、血糖値の上昇や骨密度の低下を抑制し、エネルギー代謝や筋肉、目などの機能が改善するなど、抗老化作用が報告されています」(前出・杉本氏) ほかにも、臓器移植などで使われる免疫抑制剤の一種「ラパマイシン」や、糖尿病治療薬の一種である「メトホルミン」でも、動物実験で寿命を延ばす効果が確認されているという※週刊ポスト2021年5月7・14日号
2021.05.02 16:00
週刊ポスト
プロジェクトは実現するのか?
電力不足に喘ぐ北朝鮮、金父子銅像だけに煌々と照明 住民不満
 北朝鮮では例年になく厳しい寒波が襲うなか、多くの市民は深刻な石油や石炭などのエネルギー不足による停電が頻繁に起き寒さに震えている。しかし、各都市の中心部にある金日成主席と金正日総書記の巨大な銅像は一晩中、明るすぎるくらいの照明により煌々と照らし出されている。 市民からは「庶民は寒さに耐え、すでに亡くなっている指導者の銅像に貴重な電力を惜しげもなく使っている。生きている人間よりも死んだ指導者の方が大事なのか」などと不満を募らせていることが明らかになった。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が現地の人々をインタビューした内容として報じた。 北朝鮮では昨年1月、中国で新型コロナウイルスの感染が拡大したことで、国境を完全に閉鎖。その結果、主要なエネルギーや生活用品が中国から入ってこなくなり、厳しい物資不足によって、日常生活がままならない状況に陥っている。 とくに、厳冬期はシベリアからの寒気団の襲来により、水力発電所が機能しなくなる一方、火力発電所は燃料の石炭が不足しており、電力供給は滞りがちだ。首都の平壌での1日に何度も停電が起こっているという。これが地方だと、1日に1時間しか電気が使えないこともあるとのこと。衛星写真で北朝鮮の状況を見ると、夜は完全に真っ暗で電力不足に陥っていることが分かる。 米中央情報局(CIA)が発行する世界各国の現状を記した「ファクトブック」(2019年版)によると、電力を日常的に使えるのは北朝鮮の全人口の26%だけだ。つまり全人口の2560万人のうち約1900万人が電力を十分に使えない状況に置かれている。 北朝鮮第2の都市、清津市に住むRFAの情報筋は「ここ清津市では日が暮れると、街全体が完全に暗闇の世界になります。昨年まで幹線道路沿いの企業の看板が照らされたが、今年はすべて消えています。街はゴーストタウンのようになっているが、市中心部の浦項広場の巨大な銅像には煌々と照明がついています」と語っている。 中国との国境に接している新義州市の住民は「新しい高級マンションでも、年間365日の電力供給を保証するために各家庭から700米ドルを支払わなければなりません。それでも、電気は特定の時間にのみ利用できないのですが、金日成と金正日の像だけが24時間明るく照らされているのです」と憤っている。 また、新義州市の他の住民は「電気が不足しているため、食品加工場が稼働できず、住民は常に食糧不足の状態です。餓死者も出ています。そのようなときに、24時間貴重な電気を使って、明るく照らし出されている2人の銅像を見ることは苦痛以外の何物でもありません」とRFAに語っている。
2021.02.13 07:00
NEWSポストセブン
金正恩氏(左)と有力後継者の金与正氏(EPA=時事通信フォト)
北朝鮮は国家レベルの危機 クーデターが起きないのはなぜか
 金正恩・朝鮮労働党委員長につきまとう健康不安説、そして新型コロナウイルスが国内で蔓延しているとみられる北朝鮮。こうした国難ともいえる緊急事態は過去に幾度もあったが、独裁国家につきもののクーデターが起きないのはなぜか。ジャーナリストの宮田敦司氏がレポートする。 * * * 金正恩氏の動静報道が長期間ないことで浮上した「重篤説」は、5月1日に映像つきの動静報道が再開されたことで、ひとまず終息した。しかし、体重130kgの正恩氏が、多くの生活習慣病を抱えていることは間違いない。重篤にはならなくとも、健康不安は常につきまとう。 このような良好とはいえない健康状態の影響で、正恩氏が執務不能になることが予測されていたかのように、正恩氏の妹である金与正氏がメディアに登場することが増えてきた。ただ単に妹として露出しているのではなく、労働党の要職へ就任するなど実力を伴った露出である。 正恩氏の父・金正日は、正恩氏とともに与正氏も後継者候補としていたともいわれている。このため、正恩氏の身に緊急事態が起きた場合は、与正氏が代行を務める可能性が高い。場合によっては後継者ということもあり得る。◆世界でも特異な「独裁国家」 たとえ一時的な代行者であれ、独裁国家の最高指導者が最も恐れるのは、実力組織である軍が自らに銃口を向けることである。北朝鮮の最高指導者の脳裏には、ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクが自らの軍隊により銃殺刑に処せられた場面が焼きついていることだろう。 チャウシェスクと正恩氏の祖父・金日成は親交があり、金日成の統治手法に感銘を受けたチャウシェスクが、金日成の統治手法を真似していたのだから、なおさらだろう。チャウシェスク政権は1960年代から1980年代にかけての24年間にわたり存続したわけだが、70年以上存続している北朝鮮とは比較にならない。 北朝鮮は世界的に見ても特異な独裁国家である。3代(金日成・金正日・金正恩)にわたって最高権力を世襲しているからだ。世襲を行った独裁国家はシリアのアサド政権などの例があるが、軍を完全に掌握し、3代世襲に成功したのは北朝鮮だけである。◆「政権は銃口から生まれる」 毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と述べたが、北朝鮮軍(朝鮮人民軍)の特異なところは、毛沢東の言葉どおりに1948年9月9日の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)建国よりも前である同年2月8日に創設されていることである。 このような特異な軍隊である北朝鮮軍を、金ファミリーはいかなる方法で70年以上にもわたり忠誠を誓わせてきたのだろうか。◆小規模クーデターは過去にあったが…… 例えば、現在、北朝鮮でも蔓延していると思われる新型コロナウイルス。北朝鮮は感染者の数などを一切公表していないが、首都平壌以外の病院では、点滴用のバッグをビール瓶で代用し、メスの代わりにカミソリを使用するような深刻な医療水準にあることから、治療されないまま放置された多くの患者が死亡していることは想像に難くない。 このような医療水準になってしまったのは、正恩氏の祖父の代からの失政によるものだ。医療分野だけでなく様々な分野の政策が失敗し、常に非常事態にある北朝鮮で、ダメ押しのように発生したのが今回のコロナウイルスの蔓延である。 こうした国家レベルの危機は過去に何度もあったのだが、諸悪の根源である最高指導者を打倒するために、なぜ軍がクーデターを起こさないのかと思われるだろう。じつは、小規模なクーデターや暴動は何度か起きてはいるのだが、未遂に終わるか、迅速に鎮圧されている。 結論から言えば、北朝鮮軍ではクーデターは成功しない。と言うより、「起こせない」と言ったほうがより正確だろう。これは、旧ソ連軍が最後まで政治に介入しなかった(介入できなかった)ことと共通している。 このような北朝鮮軍が置かれている状況についての理解を深めるためにも、本稿では旧ソ連軍と政治の関係について触れることにしたい。北朝鮮軍は旧ソ連軍を真似て作られているからだ。◆軍は党に従順な「ヒツジ」 1918年の赤軍創設以来のソ連軍史は北朝鮮と同様に、軍に対する粛清、共産党の監視・抑圧装置強化の過程でもあった。軍史研究家ビクトル・ゾトフ氏は、「その結果、国外に対しては威圧的な大グマだが、党にはヒツジのように従順で、自分の意思を持たない巨大集団が育てられた」と指摘する。 旧ソ連に政治危機の兆しが見えるたび、西側では軍が主導権奪取へと動く危険が幾度も論じられた。だが、共産党自体の断末魔によって引き起こされ、自滅した党保守派クーデター(1991年8月)を除けば、軍が動いた例はない。 10月革命の時点で、ボリシェビキ(レーニンを指導者とするロシア社会民主党左派)は武装労働者から成る「赤衛軍」2万人に加え、政治煽動を通じて臨時政府側の陸海軍兵士21万人を自陣営に引き込み、革命を支えた。続いて、軍事人民委員(国防相)のトロツキーは、旧帝政軍を主体とする「白衛軍」や外国干渉軍との国内戦を戦う必要上、旧帝政軍将校2万2000人を赤軍に編入した。◆軍内を監視する「政治将校」を配置 同時に、これら将校の反革命言動を監視するため党活動家(イルクン)の「軍事委員」を配置する措置が決まり、ソ連崩壊まで存続する政治将校制度の基盤が築かれた。 さらに、1917年末に発足した秘密警察「反革命・サボタージュ・投機行為取締非常委員会」は、赤軍内に監視網を設置。これは「特務部」網として、後の国家保安委員会(KGB)まで引き継がれた。 米ハーバード大のマーク・クレイマー博士は、「他の国でも防諜担当官が軍部隊に配置されるものの、ソ連軍の場合、秘密警官が一般将兵を装って潜入し、粛清の口実を探すなど極端な形態を生んだ」と指摘する。◆軍の隅々まで「秘密警察」を配置 また、KGB要員は軍の中隊レベルにまで配属されており(北朝鮮の秘密警察である国家保衛省要員も中隊レベルまで配属されている)、固有の指揮系統を通じ上部へ報告する。些細なイデオロギー的逸脱も許されない綿密な監視・摘発体制が保持されていた。 軍史に詳しいアンドレイ・リャボフ氏(ゴルバチョフ財団)は、「ソ連史を通じて、軍は共産党の抑圧政治を支える基盤であると同時に、自らボリシェビキ革命、スターリン主義の暴虐の被害者であった。軍は、党の圧政下での生存を運命づけられ、決して自ら権力を握る存在ではなかった。事あるごとにソ連の軍事クーデター発生を心配した西側は、連邦崩壊までその真理を理解しなかった」 と強調する。◆軍に対する“四重”の監視 旧ソ連軍が政治将校とKGBの二重監視だったのに対し、北朝鮮軍では総政治局に所属する政治将校、秘密警察である国家保衛省、軍の情報機関である保衛局(旧・保衛司令部)、さらに労働党組織指導部直属の通報員による四重の監視体制が敷かれている。このため、1995年以降、3回にわたりクーデターを起こそうとしたが、すべて未遂で終わっている。 韓国に亡命した元北朝鮮軍上佐(大佐と中佐の中間の階級)の崔主活(チェ・ジュファル)氏によると、総政治局は軍幹部が党の指示に忠実であるかを常に調べ、労働党組織指導部に報告するという。将校は全国に約30ある軍専門学校を卒業した労働党員である。 その中でも将軍まで上りつめる軍人は、抗日闘争や朝鮮戦争の功労者の子孫が通う「万景台革命学院」の卒業者が多く、金日成、金正日父子の教えに極めて忠実だという。また師団の移動には、兵力を束ねる総参謀長だけでなく、軍総政治局、軍政治保衛局の認可が必要で、崔主活氏は「師団を動かしてクーデターを起こすのは極めて難しい」と予測する。 北朝鮮には「自分の背中も他人」という言葉があるという。つまり、あまりの監視体制の厳しさに絶対に他人を信用できないだけでなく、寝言で体制批判をしただけでも強制収容所送りになるわけだから、自分すら信用できなくなる、ということである。◆“末期状態”になるまでクーデター不可能 北朝鮮軍がクーデターを起こすとすれば、秘密警察や治安機関、金正恩の親衛隊ともいえる護衛司令部が同時に寝返るなど、体制維持システムが末期状態を呈した時であろう。つまり、余程の条件が整わない限り、クーデターは起こせないようになっているのだ。 旧ソ連軍について、「国外に対しては威圧的な大グマだが、党にはヒツジのように従順で、自分の意思を持たない巨大集団が育てられた」というビクトル・ゾトフ氏の指摘は、北朝鮮軍にも当てはまるのではないか。 北朝鮮軍はクーデターを起こさない。そして、独裁政権に従順な守護神としてこのまま存続する。厳格な監視体制が機能していることにより、国家レベルの危機に直面しても独裁政権の脅威にはならない北朝鮮軍だが、周辺国に対する脅威は、北朝鮮が民主化され、軍が解体されるまで続くのである。
2020.05.15 07:00
NEWSポストセブン
兄も頭が上がらない(時事通信フォト)
北の新女帝・金与正氏は男勝りで好戦的か 韓国側も危機感
 4月末、北朝鮮の金正恩労働党委員長に浮上した重体説。各国で「すでに死亡」「脳死状態」と後追い報道が相次いだが、正恩氏の姿を北朝鮮メディアが報じ、騒動は幕引きに。この機に注目されたのが北の後継者問題だ。北朝鮮情報サイト「デイリーNKジャパン」編集長の高英起氏が語る。「金正恩委員長に健康不安が残るのは事実。彼に万一のことがあった場合の後継者は、妹の金与正(キム・ヨジョン)しかないでしょう」 党第1副部長を務める1988年生まれの与正氏は今年32歳。2015年に結婚し、1児を出産したとされる。「2018年の平昌五輪では代表団を率いて初訪韓し、南北会談にも同行するなど、ファーストレディ的ポジションにあった。韓国では笑顔を振りまき、文在寅政権の高官からも好評でした」(高氏) 鼻筋がきりりと通った“クールビューティ”。「訪韓の際は微笑みが可愛らしいと好意的に報じられ、目尻を下げた韓国男性は多い」(韓国紙記者) だが、3月2日に北朝鮮が短距離弾道ミサイルを発射し、韓国大統領府(青瓦台)が遺憾の意を示すと態度は急変。〈青瓦台はまるで3歳児〉〈低能ぶりに驚かされた〉〈怖気づいた犬ほどよく吠える〉と金与正名義で挑発的な声明を発したのだ。「酔って側近を叱責した金正恩を強く諫めたという話も伝わり、男勝りで好戦的な人柄が窺われる。彼女主導になれば偶発的な衝突の可能性もあると韓国側は危機感を強めている」(同前) 後継者には正恩氏の叔父・金平日氏の名も挙がるが、高氏はこう見る。「女性が指導者になれないというのは昔の話。金日成の血を引く彼女なら何ら問題ない。政治家としての“腹芸”もでき実務的素養は十分」(高氏) 世界が“氷の微笑”に振り回される日は来るか。※週刊ポスト2020年5月22・29日号
2020.05.12 16:00
週刊ポスト
不穏な空気が漂う(朝鮮通信=時事)
金正恩「重篤」説 太り過ぎの健康問題が北朝鮮最大のリスク
「金正恩・朝鮮労働党委員長が何らかの手術を受けた後、重大な危険に陥っている」──4月21日、米CNNの放った一報が世界を駆け巡った。 韓国大統領府は「北朝鮮内部に特異な動向はない」と否定的見解を示したが、CNNの報道内容を裏付けるような情報は他にもある。 北朝鮮情報サイト「デイリーNK」は4月20日、金委員長が密かに心臓疾患の手術を受け、厳戒態勢のもと別荘で療養中だと報じた。手術を受けたとみられる4月12日には、平壌市内でヘリコプターが離陸する様子や、金正恩氏の専用車が移動するのが目撃されたという。 他にも新型コロナウイルス感染による集中治療説など、様々な憶測が飛び交っている。デイリーNKジャパン編集長の高英起氏が語る。「(重篤説が流れた)ポイントは、4月15日(故・金日成主席の生誕日)に金正恩氏が錦繍山太陽宮殿を参拝しなかったこと。この日は毎年必ず参拝して労働新聞1面に出ていたが、今年はなかった。健康悪化説の発端です。 真偽はまだはっきりしないが、傍目にも太り過ぎが明らかな正恩氏の健康問題が、北朝鮮最大のリスクであることに変わりありません」※週刊ポスト2020年5月8・15日号
2020.04.28 07:00
週刊ポスト
【動画】北朝鮮で氷点下の中、集団ダンス 寒すぎて無表情に
【動画】北朝鮮で氷点下の中、集団ダンス 寒すぎて無表情に
 寒いのか、無表情でダンスを踊る北朝鮮の人たち。大勢の人が、輪になって踊っている。12月24日、北朝鮮・平壌の党創立記念塔の前で、故・金日成国家主席の妻、故・金正淑氏の誕生102周年を祝う集団ダンスが行われた。 金正淑氏は1917年生まれ。1940年に金日成国家主席と結婚し、翌1941年に金正日総書記を出産したとされる。1949年、32歳で死去した。ダンスの様子をよく見ると、男性は皆、赤いネクタイをしている。厚手のコートを着込んで、いかにも寒そうだ。当日の平壌の気温は昼もマイナス2.8℃だった。 
2019.12.29 07:00
NEWSポストセブン
【動画】整然と、しかし異様な「金正日総書記・没後8年の献花」
【動画】整然と、しかし異様な「金正日総書記・没後8年の献花」
 12月17日、北朝鮮の平壌。金正日総書記の死去から8年が経ったこの日、軍人や市民らによる献花が行われた。市中心部にある万寿台の丘には金正日総書記と金日成主席の銅像があり、多くの市民らが花を持って詰めかけた。列を作って、整然と歩く市民たち。 献花台まで歩いてきて花を置くと、すぐに踵を返して去っていく様子が印象的だ。雨の中、献花は夜まで続いた。 長距離弾道ミサイルの開発を急ピッチで進める北朝鮮。朝鮮労働党機関紙の労働新聞はこの日、アメリカ主導の制裁を念頭にして「敵対勢力の策動が強まっている」と指摘。今後の動向が注目される。 
2019.12.20 07:00
NEWSポストセブン
韓国歴史教科書 金日成の功績記述し日本の功績消えつつある
韓国歴史教科書 金日成の功績記述し日本の功績消えつつある
 日韓外交でたびたび火種となるのが両国の歴史認識の相違だが、その根源を探るため、韓国の最新歴史教科書を検証してみよう。 韓国の教科書事情に精通する韓国人作家の崔碩栄氏が「2010年以降の教科書記述の変化」と指摘するのは、北朝鮮に関する記述だ。近年の歴史教科書では、金日成の抗日運動についてこう記されている。〈1937年6月、東北抗日聯軍内の韓人部隊員たちは鴨緑江を渡って咸鏡南道普天堡地域を襲撃した。彼らは警察駐在所や面事務所、消防署など日帝の行政官庁を攻撃し、追撃した日本軍を奇襲攻撃して被害を与えた。この作戦を成功させた金日成の名前も国内に広まることになった〉(『高等学校 韓国史』東亜出版) この事件は歴史学者の間でも諸説あり、金日成の関与に疑義を示す声もあるが、教科書は「史実」として掲載している。韓国の教科書事情に精通する韓国人作家の崔碩栄氏が解説する。「北朝鮮の指導者の功績を韓国の教科書が触れるなど、一昔前では考えられなかった。南北はいまだ戦争中であり、北への賛美などあってはならないという政府の方針があったからです。こうした変化は、昨今の南北融和路線の影響だと思います」 戦後の主要トピックは、1965年の日韓国交正常化だ。こう記述されている。〈両国外交の出発点となったが、植民地支配の謝罪と賠償はなかった。無償3億ドル、有償2億ドルの援助があったが、これは経済協力の名のもとに行なわれた。日本の戦争責任は果たされなかった〉(同前) 一方、宮澤喜一内閣で河野洋平・官房長官が出した河野談話(1993年)については、〈強制連行について日本軍の関与を認めた〉(同前)と評している。 1960~1970年代の経済成長「漢江の奇跡」については、〈日韓国交正常化以降に入ってきた日本の資本と、ベトナム戦争による米ドルの流入が、この時期の経済発展に寄与した〉(同前)として、日本の経済支援が一助になったことに言及している。 ただし、「漢江の奇跡」については、今年3月、小学校の国定教科書からその記述が削除された。数少ない“日本の功績”の記述は教科書から消えつつある。 そして、前出の『高等学校 韓国史』では、現代史の項でこんな「課外学習」が推奨される。〈日帝占領期の歴史人物や主要事件について動画を作成して発表してみよう〉〈日本大使館前で開催される集会に行き、集会参加者にインタビューをしよう〉 動画編集作業に必要なパソコンのソフトを紹介し、〈背景音楽、字幕、ナレーションなどを通じて躍動感あるように表現〉することを求めている。「YouTubeなどで慰安婦問題について広く発信するよう教科書で啓蒙しているといえます」(崔氏)※週刊ポスト2019年10月18・25日号
2019.10.11 16:00
週刊ポスト
【関川夏央氏書評】亡命した高級外交官が見た北朝鮮の真実
【関川夏央氏書評】亡命した高級外交官が見た北朝鮮の真実
【書評】『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』/太永浩・著 鐸木昌之・監訳 李柳真・黒河星子・訳/文藝春秋/2200円+税【評者】関川夏央(作家) 二〇一六年に任地ロンドンで脱北した北朝鮮の高級外交官、太永浩(テ・ヨンホ)の手記。長い。四百字詰め原稿用紙で千枚強。題名に「秘録」「暗号」とあるが、「現政権温存」以外に目的のない北朝鮮だから、たいした「秘密」はない。ただ粛清と処刑が横行するばかりだ。それも、思いつきの政策着手の、ほとんど「景気づけ」のためだというからたまらない。 北朝鮮の役人はすべてを上に報告する。外務省だけで一日千ページ分にもなる。それを「首領」が全部読むわけにはいかないので「三階書記室」でえり分ける。結果、情報の集中するところに権力が生じる。一方、各機関の横の連絡は禁じられているから、北朝鮮政府は北朝鮮を知らないのである。 著者は一九六二年生まれ、中学生で北京に留学して英語を学んだが、文革終了直後の北京の自由な風には吹かれなかった。帰国して外交官養成大学を卒業、北京外大に留学した。英語を学ぶのも中国で、というところが悲喜劇だ。 二十六歳で外務省入り、デンマーク駐在書記官だったとき、北朝鮮の飢えた幼児たちの写真が世界に流布した。デンマーク企業が、イランへの経済制裁で宙に浮いた大量のチーズを「飢えた子ら」に、と寄付した。金正日はそれを、自身の「誕生日プレゼント」として軍隊に贈り、著者には「金日成尊名時計」を与えた。悪質な詐欺だ。 金日成は南を「解放」する戦争準備に熱中し、金正日は拉致を含めたテロに専心した。金正恩は核武装と処刑・暗殺で自己主張する。三代を通じて経済政策と呼べるものはなく、一九九〇年代後半に「国家」としては破綻したから、現在は「重武装の団体」にすぎない。 このような北の異常と惨状にあっても「革命」を志向しない住民の無気力さそのものが「コリア文化」の産物なのだとすれば、本質的な意味でコワい。金正恩に秋波を送る韓国大統領にもとめられるのは「民族主義」ではない。「自文化の客観」と「歴史観の修正」であろう。※週刊ポスト2019年9月20・27日号三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録
2019.09.18 07:00
週刊ポスト
反日感情は落ち着く気配無し(Sipa USA/時事通信フォト)
GSOMIA破棄なら半島危機も ソウルが金正恩に占領される
 韓国・文在寅政権が破棄を決定したGSOMIA(軍事情報包括保護協定)について、「協定破棄で大きなリスクを負うのは、むしろ韓国のほうだ」と専門家は指摘する。海上自衛隊で自衛艦隊司令官(海将)を務めた香田洋二氏はこう語る。「喫緊の課題である北朝鮮の弾道ミサイルに対する防衛に着目すれば、韓国が被るダメージが大きいと考えられます。1998年のテポドンの日本列島上空通過を受けてミサイル防衛システムを整備した日本の場合、破棄されても協定があった時を仮に100点としてみれば、およそ及第点85点の水準を維持できます。しかし、韓国は自前のミサイル防衛システムを持っていません」 それだけではない。日本は事実上の偵察衛星である情報収集衛星を7基運用しているが、韓国の保有はゼロだ。「P-1、P-3Cといった洋上哨戒機を日本は73機保有していますが、韓国は18機。電波情報収集機という最新鋭の航空機を日本は5機保有していますが、アメリカ以外で運用しているのはわが国だけです。GSOMIAの破棄の結果、韓国は高度に整理されたこれらの情報を共有する資格を失います。今後、北朝鮮が今にもミサイル攻撃を始めるという段階に至った際、情報を入手できない事態に直面するでしょう」(同前)◆ソウルは3日で占領できる さらに深刻なのは、アメリカの信頼を失ったことだ。エスパー米国防長官はわざわざ8月上旬に訪韓し、〈GSOMIA維持〉を求めていたが、韓国は反対に、破棄という選択をした。「GSOMIA破棄は、この協定を〈対北侵略同盟の象徴〉と見る北朝鮮が求めてきたことです。同盟国であるアメリカの要求より、仮想敵である北朝鮮の言い分に従った格好で、米韓同盟の根本に疑問を投げかけたに等しい」(同前) 韓国は、戦後一貫して米国と行動をともにすることで自国の安全保障を確立してきた国だ。韓国国防部(省)も継続を求める中、青瓦台(大統領府)主導の今回の決定に、不穏な兆候を感じるのは軍事ジャーナリストの井上和彦氏だ。「GSOMIAの維持の要請と並行して、韓国はアメリカから在韓米軍の防衛費分担金について現在の1兆389億ウォン(905億円)から約5倍に引き上げるよう圧力をかけられていました。あくまで推察ですが、北朝鮮に対する思い入れから南北統一を目指す文在寅政権はアメリカの要請に反する協定破棄の決定を通じて、暗に〈在韓米軍も撤退してほしい〉と伝えようとしていたのではないか」 井上氏の想像通りなら、朝鮮半島に“力の空白”を招きかねない危険な選択だ。いざ北朝鮮が暴走して地上部隊を南進させれば、軍事境界線からわずか約40kmの距離にあるソウルは火の海になりかねない。 1950年6月に北朝鮮軍が突如、38度線を突破して南進を始めた際には、韓国軍は奇襲に全く対応できず、ソウルはわずか3日で陥落。金日成の率いる北朝鮮軍は、南へと侵攻を続け、数か月後に韓国軍は釜山まで追い詰められた。その後、アメリカを中心とする国連軍が仁川上陸作戦を敢行して形勢が逆転したが、中国義勇軍の参戦などもあって国境線は現在の38度線に再び落ち着いた経緯がある。 300万人が犠牲になったこの朝鮮戦争の歴史を振り返るまでもなく、北朝鮮と地続きである韓国が負っている地政学的リスクは、日本よりもはるかに大きいし、それゆえ国土の防衛はアメリカの軍事力により大きく依存してきた。その韓国がアメリカに背を向けることのリスクは非常に大きい。「想像したくもありませんが、北朝鮮が社会主義体制を維持したままの“連邦国家”というかたちで実質的に朝鮮半島が統一されるという、韓国の国民でさえ誰も望んでいないようなシナリオが現実味を帯びてくる。もちろん、それは日本にとってもリスクですが、韓国にとっては国家の存亡にかかわってくる事態です」(井上氏) 日米に背を向けたGSOMIA破棄決定の代償は、とてつもなく大きいものになるかもしれない。※週刊ポスト2019年9月13日号
2019.09.03 07:00
週刊ポスト
韓国人名誉教授「文在寅が経済戦争で日本に勝つ可能性はない」
韓国人名誉教授「文在寅が経済戦争で日本に勝つ可能性はない」
 韓国での反日デモは異様な盛り上がりを見せているように映るが、日韓関係について客観的事実を知る多くの韓国人が実は「文在寅政権は間違っている」と感じている。 文在寅政権は、やることなすことがデタラメ──そんな危機感から取材に応じてくれたのは李大根・前成均館大学校名誉教授(経済学)だ。「韓国大法院の徴用工判決はとんでもない判決でした。在寅大統領は少なくとも最高裁判決が出る前に大法院と協議すべきだった。国同士の条約、協定を無視することは、国の品格に関わる大きな問題です」 文政権の大きな欠陥の一つがその経済音痴ぶりだといわれている。韓国メディアからも「実験経済」と揶揄されるほど、経済学的な根拠に乏しい政策が多いためだ。李大根氏もこう呆れる。「文在寅大統領は南北平和経済で日本に勝てると主張していますが、その可能性は全くない。韓国の市場経済と、北朝鮮の命令(軍事統制)経済を統合させることは事実上不可能です。唯一の方法は韓国が北朝鮮を経済援助する形ですが、その場合は韓国経済の負担があまりに大きすぎる。そのような状況下で日本経済に勝つことができるはずがないのです」 文大統領は「頭の中の80%が北朝鮮で占められている」といわれるほど、親北であることはつとに有名だ。李大根氏は、歴史問題に拘泥する文大統領の姿に、彼の国の元指導者の姿を思い浮かべるという。「かつて金日成は『カックン理論』というものを提唱していたことがあります。“カッ”は朝鮮の知識層が被った伝統的な帽子で、“カックン”は顎紐のこと。韓国の力を奪うためには、日本、米国のどちらかを切ればいいという理論です。紐の一方だけ切れば韓米日の三国間のバランスを崩すことができる。文大統領はこの金日成の理論を踏襲する形で反日活動を行なっているように見え、韓国に不利益な政策ばかりを行なう」 では経済摩擦に発展した日韓関係はどうなってしまうのか。「日本は技術立国として長い歴史を持ち、その技術力で多くの物を作ることができます。一方で韓国経済の歴史はまだ浅く、技術の数も少ない。しかもその経済構造は“サムスン共和国”と言われるほど歪で、半導体でサムスンが不調となれば韓国経済に甚大な影響を及ぼす。そんな状況下で経済戦争を始めれば、まさに韓国経済を滅ぼしかねない事態になる。韓国経済は隣国(日本)の助けを得て成長してきたことを忘れてはいけない」 まだまだ経済の奥行きでは韓国は日本経済に及ばない──そう李大根氏は語った。●取材・文/赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう):「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て今年1月よりフリーに。南アフリカ・ヨハネスブルグ出身。※週刊ポスト2019年8月30日号
2019.08.20 07:00
週刊ポスト
反日がエスカレートしている(AFP=時事)
文在寅氏に大ブーメラン 徴用工被害者1386人が韓国政府訴えた
 3・1独立運動100周年に際して国家総出で「反日の炎」を燃やした韓国で、文在寅政権に“巨大なブーメラン”が突きつけられた。大統領自ら「日本は謙虚になるべき」と訴えていた徴用工問題で、被害者団体がなんと韓国政府を訴えたのだ。本誌・週刊ポスト前号「封印された慰安婦涙の“感謝”映像」で慰安婦問題の矛盾を浮き彫りにした気鋭のジャーナリスト赤石晋一郎氏が、韓国反日運動の「内実」を明かす。 * * *「私が韓国政府に言いたいのは、徴用工問題で日本企業相手に裁判を起こす動きを政府が止めさせるべきだ、ということです。なぜなら韓国政府はその前にやるべきことがある。だから我々は韓国政府を訴えたのです」 こう語気を強めて語るのはアジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会の崔容相(チェ・ヨンサン)事務局長だ。同遺族会は多数の太平洋戦争被害者や遺族が参加する有力団体の一つである。 3・1独立運動(※日本統治下の朝鮮で1919年に起きた日本からの独立運動)から100年を迎え、韓国では反日イベントが国家的な盛り上がりを見せた。 しかし、そうした中で危機感を覚えている人々がいた。太平洋戦争で人生を翻弄された被害者や遺族たちだ。いま、彼らが“韓国政府批判”を口にし始めたことには、深い理由があった──。 文在寅政権のもと、慰安婦や徴用工などの歴史問題が再燃している。特に徴用工問題では日韓の経済関係にも打撃を与えかねない大きな動きが起きた。昨年末に元徴用工が日本企業を訴えた裁判で、韓国大法院(最高裁)が新日鉄住金、三菱重工に対して、相次いで賠償を命じる判決を下したのだ。新日鉄住金に対しては原告代理人が差し押さえ資産の売却を宣言しており、強引に賠償金を得ようと行動をエスカレートさせている。韓国政府はそうした動きに対し司法に介入せずと静観しており、事実上の追認をしている。 今回、韓国大法院判決が出た徴用工裁判は、実はそれで問題が解決するという類いのものではない。「例えば新日鉄住金の裁判の原告は4名とごくわずか。だから彼らが賠償金を得たとしても、数万人にも及ぶと予想されている他の徴用工の問題は、まったく解決しないのです」(韓国人ジャーナリスト) この裁判がことさら韓国内でクローズアップされたのは、裁判を支援する「民族問題研究所」の影響力が強かったからだといえよう。 民族問題研究所は「親日派バッシングを行動原則とする“極左”の市民団体」(同前)で、2018年8月29日にソウル市龍山区に「植民地歴史博物館」をオープンさせたことでも知られている。文政権とは“反日”という部分も含め、思想的に深く繋がっているとされる。 前出の崔事務局長は、「民族問題研究所は、我々のような被害者団体ではない。その本質は“政治団体”なのです」と指摘し、こう続ける。「現在、民族問題研究所は被害者団体のふりをして、テレビを通じて原告探しまで行なっています。なぜ民族問題研究所の呼びかけに応じて被害者が集まらないといけないのでしょうか。 彼らの方針どおりに日本企業を訴えても被害者にはひとつもプラスにならない。なぜなら日韓関係が悪化すれば日本政府や日本企業はますます頑なになるでしょう。それによって残された徴用工問題の被害者が賠償を受ける機会が潰えてしまう可能性が高くなる。一部の被害者だけが補償を受け、他は置き去りにされるという不平等が起こる。そこで我々は被害者のための基本的な裁判を起こすことにしたのです」 その訴訟相手こそ、韓国政府だったのだ。◆原告は1386人 アジア太平洋戦争犠牲者韓国遺族会は、昨年12月20日、徴用工被害者と遺族を原告として、韓国政府を相手取り1人あたり1億ウォン(約1000万円)の補償金を求める訴訟をソウル中央地裁に起こした。「韓国政府は韓日条約に基づいて日本からお金を受け取っています。韓国政府はその受け取った資金を(戦争)被害者に渡さなかった過去がある。だから私たちは、日本から韓国政府が貰ったお金が被害者に渡っていないという状況を“正す”ことが必要だと思いました」(前出・崔事務局長) 日本と韓国政府は1965年、日韓基本条約を結んだ。そのときに協議した日韓請求権協定に基づき、日本政府は無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドル(当時のレートで約1800億円)を韓国政府に提供している。条文には〈日韓両国とその国民の財産、権利並びに請求権に関する問題が、完全かつ最終的に解決されたことを確認する〉とあり、植民地時代の賠償問題はこれで解決したとされた。「しかし、昨年末の徴用工裁判では、韓国大法院は植民地支配を不法なものとして、『不法行為における損害賠償請求権』は日韓請求権協定の範囲に含まれないという解釈を発表し、企業側に賠償を命じたのです。常識では考えられないような司法判断だと、日本政府側も驚いていました」(ソウル特派委員) だが崔事務局長らは、問題は別にあると着目した。日本が渡した5億ドルは韓国内では主に経済開発に使われ、被害者賠償は十分になされなかった。だから賠償責任は第一次的には韓国政府にある、と考えたのだ。訴訟を担当する朴鍾泰(パク・ジョングアン)弁護士が法的根拠を解説する。「韓国では1965年に結ばれた韓日条約の交渉記録が公開されています。それによると賠償については日本側が行なうという申し出について、韓国政府は『自国民の問題だから韓国政府で行なう』と返答しています。『韓国側が無償提供された3億ドルを使い、強制連行者を含む賠償協議を行なう』ともあります。これらの資料は証拠として裁判所に提出しました。韓国政府には、国家が利益を横領したという『不法行為』と、国家が不当に利得を得たという『不当行為』、その2つの問題があるという理由で我々は裁判を起こしたのです」 つまり、被害者が手にする権利を有する金銭を政府が「横領して使い込んだ」という主張なのである。 今回、徴用工で韓国政府を提訴した原告は1103人。韓国政府を相手に複数の裁判が起こされており、軍人・軍属等の広義の意味での徴用者を含めた原告の累計は1386人に上り、さらに増え続けているという。「日本企業を訴えている民族問題研究所などは日本による植民地支配が不法だったと主張し裁判をしていますが、韓国が弱かったから植民地にされたということに対して、ナショナリズムの観点だけで不法と言うのは間違っている。さらに韓日条約での取り決めを無視して、日本企業を訴えることにも無理がある。国家間の問題は事実と公平性を鑑みて取り組むべきなのです。 我々の裁判は新しい視点を取り入れた、理知的なものだと考えています。今まで韓日条約を対象とした裁判は前例がありません。秋頃にソウル地裁で判決が出ると考えていますが、これは史上初の注目すべき判例となるはずです」(同前)◆被害者と遺族の苛立ち こうした韓国政府相手の裁判が起こされた背景には遺族会の焦燥があった。 慰安婦問題では挺対協(現・日本軍性奴隷制問題解決の為の正義記憶連帯)、徴用工問題では民族問題研究所といった“極左”市民団体──韓国では「運動圏」と呼ばれる──が文政権と歩調を揃えるような意見を唱え、歴史問題を牛耳っている状況にあるからだ。 市民団体だけが我が物顔で活動する一方で、被害当事者は道具として利用されるだけ。状況が何も改善されない現実に被害者や遺族は苛立ちを覚えている。「政府は挺対協や民族問題研究所を経済的に支援し、メディアも彼らに協力している。一方で、私たち被害者団体には1ウォンの援助もありません。被害者に顔を背け、『運動圏』だけを支援することは本末転倒なこと。 だから、我々はまず韓国政府の力で請求権問題は解決すべきだと考え裁判を起こした。それでも不足する場合は、日本政府に人道的支援として補償を求めるということがあってもいいでしょう。民族問題研究所などが行なっている裁判は、被害者救済ではなく政治的な裁判です。そんなことをしては韓日関係が悪くなるだけで、問題は何も解決しません」(前出・崔事務局長) 常々「日本政府は被害者の声を聞いてない」と主張する文政権だが、その言葉はブーメランのような形で訴訟として戻ってきた。何より大きな問題は、文政権や市民団体が進めている反日行動により、本当の被害者が置き去りにされようとしていることにある。◆「文政権は極左だ」 2月25日、日本大使館前で白装束の人だかりができていた。その数は50人あまり。先頭に立ち「日本政府は問題を直視しろー!」とシュプレヒコールを上げていたのが、太平洋戦争犠牲者遺族会会長の粱順任(ヤン・スニム)氏だ。 太平洋戦争犠牲者遺族会は、崔事務局長の団体をはじめ現在はいくつかに枝分かれした遺族会の本家ともいえる組織。梁氏は「慰安婦問題」を報じた元朝日新聞記者・植村隆氏の義母で、韓国で1990年代から始まった戦後補償要求運動の草分け的な人物としても知られる。 デモの翌日、ソウル市内で梁氏に話を聞いた。日本に厳しい対応を迫ってきた彼女だが、今訴えているのは、意外にも日本以上に韓国国内の問題だった。「被害者団体として長く活動をしてきましたが、高齢化など様々な理由で我々の声が届きにくくなってしまった。今では、活動の中心が左派・運動圏に移ってしまいました。このままでは韓日関係は悪くなると憂慮しています。いまこそ被害者の真の声を届けないといけないと考え、日本大使館前でデモを行ないました」──デモでは天皇についても言及されていました。「天皇を取り上げたのは平和の象徴としてです。まず、お互いが理解し合える対話を重ねることが大事なことなのです。そうすれば韓日の橋渡しをする平和の使者として、天皇が来韓できる道筋ができると思う」 梁氏が表情を曇らせたのは、民族問題研究所傘下で徴用工裁判支援の中心人物であるA氏について質問したときだった。A氏は現在韓国内で徴用工問題に尽力する“名士”として崇められている人物だ。 じつは梁氏とA氏は、もともと太平洋戦争犠牲者遺族会の同志だったという。遺族会関係者がいきさつを明かす。「アジア女性基金が元慰安婦に償い金を渡す事業を始めたときに、受け取った元慰安婦に『日本の汚いお金は返しなさい!』と脅して回ったのがA氏でした。1996年に遺族会に日本政府から1億円の慰霊費用を出す計画があったときも、A氏は『日本は信用できない』と大反対して潰してしまった。A氏は運動圏に寝返ってしまった人間で、遺族会にとっては裏切り者といえます」 日本企業相手の徴用工裁判の原告が少ないのも、A氏のこうした行状が遺族などの間で不信感として広がっているからのようだ。再び梁氏に聞いた。──民族問題研究所等の市民運動家たちについてはどう考えているのか?「日帝時代を知らない運動家たちが反日の声をあげているのを見ると、いったい彼らは何を知っているのかと思ってしまう。運動圏が被害者活動を乗っ取ってしまったことで、遺族会はバラバラに分裂してしまい被害者の声が届き難くなってしまったという現実がある。どこが民族のための活動なのか、と私は言いたい」 そして、文大統領への評価も辛辣なものだった。「文大統領の周りはチュサパ(主思派)で固められています。チュサパは北朝鮮よりも強い主体思想(金日成が提唱した独自の社会主義理念)を持つ人たち。彼らは歴史問題にも強い影響力を持つ。だからこそ、日本政府主体の解決を目指してほしいと、私は訴えているのです。 いまは文政権・運動圏vs日本政府という構図になってしまっている。私たちはそれを、被害者中心の直接協議に戻したい」 奇しくも遺族団体のリーダーたちが揃って口にしたのが文政権や極左市民団体への批判の言葉だった。 被害者の声が後回しにされ続けてしまう──。戦後賠償の迷走は、もう一つの“恨”を韓国社会に産み落としてしまった。日本政府はいつまでこの韓国国内の問題に振り回されなければならないのだろうか。※週刊ポスト2019年3月15日号
2019.03.04 07:00
週刊ポスト

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