そしてついにゲシュタポが彼らに迫る。
繰返し言えば、当時はヒトラーの絶頂期であり、大多数のドイツ国民は独裁者に熱狂した(ナチスは形の上では選挙によって選ばれた合法政権だった)。
その時代にあって、市井の無名の夫婦が、こういう抵抗運動を行なっていたとは驚く。同時に、これしか抵抗の方法がなかったという冷厳な事実を思い知らされる。
監督はスイス出身でフランス映画界で活躍する俳優のヴァンサン・ぺレーズ(「王妃マルゴ」など)。美男の人気俳優がこういう骨のある映画を作ったことに希望がある。
◆文/川本三郎
※SAPIO2017年7月号