一つは、働かなければならないがん患者の実情をまったく理解していないということだ。がん患者は「患者」であると同時に、自分や家族を支えていく「生活者」である。最近は、親になる年齢が高齢化していることに伴って、小さな子どもを育てながら、治療を受けている人も多い。生きるためには治療が必要であるが、生きれば生きるほど治療費がかかり、子どもや家族の生活を圧迫していくという状況に苦しむ人もいる。そんな厳しい状況で、働いているがん患者がいることを想像してほしい。

 二つ目は、喫煙の害を甘く考えていることだ。これは医師としてどうしても言っておきたい。

 タバコは、がん患者だけでなく、すべての人の健康によくない。たとえば、タバコを吸う男性は、吸わない人に比べて、すべてのがんでリスクが2倍高い。食道がんは3.3倍超、肺がんは4.8倍、膀胱がんや尿路がんは5.4倍にも跳ね上がる。

 がんだけではない。脳卒中や心筋梗塞は1.7倍、肺気腫や高血圧も喫煙が影響しているといわれている。

 さらに問題なのは、受動喫煙だ。タバコの副流煙には、健康を害する物質がたくさん含まれているといわれ、喫煙者の周りの人たちに対する健康被害が明らかになってきた。

 厚生労働省の研究班は、受動喫煙により年間1万5000人が死亡していると発表している。また、肺がんでは、夫がタバコを吸っているだけで1.3倍、脳卒中も1.3倍高まる。

 医療費を抑制するためには、喫煙率の低下や、受動喫煙防止はとても重要なカギとなるはずだ。だが、憲法で保障する「幸福を追求する権利」などを持ち出して、どこでもタバコを吸えるようにしたほうがいいという愛煙家や、タバコ産業のロビー活動がおそらくあり、なかなか実現しないのだろう。

関連記事

トピックス

東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
ディップがプロバスケットボールチーム・さいたまブロンコスのオーナーに就任
気鋭の企業がプロスポーツ「下部」リーグに続々参入のワケ ディップがB3さいたまブロンコスの新オーナーなった理由を冨田英揮社長は「このチームを育てていきたい」と語る
NEWSポストセブン
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《渡部建の多目的トイレ不倫から5年》佐々木希が乗り越えた“サレ妻と不倫夫の夫婦ゲンカ”、第2子出産を迎えた「妻としての覚悟」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン
愛知県豊田市の19歳女性を殺害したとして逮捕された安藤陸人容疑者(20)
事件の“断末魔”、殴打された痕跡、部屋中に血痕…“自慢の恋人”東川千愛礼さん(19)を襲った安藤陸人容疑者の「強烈な殺意」【豊田市19歳刺殺事件】
NEWSポストセブン
都内の日本料理店から出てきた2人
《交際6年で初2ショット》サッカー日本代表・南野拓実、柳ゆり菜と“もはや夫婦”なカップルコーデ「結婚ブーム」で機運高まる
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン