倉本聰脚本で話題の連続ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)で女優として活躍する一方、毎月のようにステージに立って歌い続ける五月みどり(77)。初ステージから61年。今も華やかな魅力を放つ五月だが、その人生は波乱に満ちていた──。
精肉店を営む父親は、自分で作った芝居小屋に役者として立つほどの芸事好き。そのため、五月は6歳から日本舞踊を習い続け、16歳の1956年に『ものまねのどじまん』(ニッポン放送)で優勝。同年に初ステージを踏み、芸能界入りへの扉を開いた。
とはいえ、すぐにデビューに辿り着いたわけではない。レコード会社の廊下の椅子に座り、声をかけられるのを待つ日々が続く。そんなある時、多くの歌手やダンサーとともに、ベトナムに40日間の興行に出向く仕事が舞い込んだ。
「旅客機ではなく貨物機で行ったんですよ。窓はないし、中は貨物だらけ。私は振袖姿で、家でお母さんに結ってもらった髪に簪をいっぱいつけて、合計30時間以上乗っていました。簪を外したら、自分で元に戻せなくなりますからね(笑い)」
空港に降り立つと、一人だけ華やかな衣装をまとう五月に一斉に視線が注がれた。