1982年に起きたホテルニュージャパン(東京・永田町)の火災では、スプリンクラーの未設置、故障した火災報知器の放置などが33名もの死者を出した要因とされている。避難時にも高さがネックになる。
「いざ火災が起きた際、住人は非常階段で地上を目指すことになります。火災は停電を招きやすいので、エレベーターでの移動は厳禁なんです。閉じ込められてしまう可能性がある」(山村氏)
ここで問題になるのが、足腰の弱った高齢者や障害者だ。彼らが高層階から自力で階段を下りるのは至難の業。
「家族や隣の住人など、有事の際に介助してくれる知人がいないかたは、はっきり言って高層マンションには住まない方がいい」(前出・不動産関係者)
実際、高層ゆえの危険を示す数字が存在する。昨年1月、カナダ・トロント市の救急隊が医学誌『CMAJ』に衝撃の調査結果を発表した。同隊が2007年から2012年までの5年間、心肺停止になった高層マンション住人8000人を対象に生存率を調査したところ、階数が上がるにつれてその数字が如実に減っていたのだ。
調査結果によれば、1~2階の住人の生存率は4%、3階以上で2.6%。16階以上になると1%未満に激減し、25階以上では生存者が1人もいなかった。理由はただ一つ、階が上がるほど救急隊の到着に時間がかかり、救命医療が間に合わないからだ。
同調査は災害に限らず全ての心肺停止事例を調査したものだが、高層階に住むということは、1分1秒を争う緊急時に際して、大きなリスクを抱えていることに他ならない。
※女性セブン2017年7月13日号