乳児血管腫では、その16%に痛みを伴う潰瘍が形成され、視覚障害は5.6%、気道閉塞は1.4%も発生する。治療にはステロイドやインターフェロンαなどの薬物に、レーザーの放射線治療などが併用されてきたが決定的な効果は得られなかった。
ところが2008年、アメリカの有名医療雑誌に画期的な治療効果を示す事例が掲載された。右目が血管腫に覆われ、まったく目が開かない乳児が心臓機能の悪化のため心臓の治療薬プロプラノロールの服用を開始したところ、1週間もしないうちに血管腫が減り始め、4か月後にはほとんど目立たないまでになった。この偶然の発見から、血管腫に効果があるのでは、と他の研究者も研究を開始、効果が確かめられてきた。
日本では2016年に小児用シロップ薬が保険承認されている。
「血管腫の中には、カサバッハ・メリット症候群があります。これは血管内皮が大増殖すると血管内部で血小板とフィブリノゲンという止血物質が使われ、その結果、体全体で減少していきます。そのため何かにぶつけただけで、多量の出血があるなど命に係わることもあります。その治療薬を探す臨床研究で、mTOR阻害剤に効果がありそうだとわかりました」(七野医長)