「毎日、“聡ちゃん、今日もこれ作ったよ”と自作したバッグを嬉しそうに持ち帰っていました。あの幼稚園は、読み書きを教え込むような教育法ではないので好感を持っていたんです」(育子さん)

 と、記者が祖母に話を聞いている最中、肩にかばんをかけた学生服姿の藤井四段が帰宅した。日本中を騒がしている中学生とは思えない落ち着いた表情で、祖母にペコリと頭を下げて自宅に入った。

◆藤井四段を支えた祖父

 藤井四段は5才の時、育子さんから子供用の将棋盤セットを与えられて将棋を始めた。

「すぐに夢中になりました。平仮名よりも早く将棋の駒を覚えて、毎日、うちに来ては将棋盤に向かっていました」(育子さん)

 指し手を熟考しながら道を歩き、誤って側溝に落ちるほど熱中する息子を母は黙って見守った。当時、藤井四段を支えたのは祖父だった。最初こそ将棋相手を務めたが、すぐ実力ではかなわなくなった祖父は、自らは一歩引いて孫の成長を楽しみにするようになった。

「聡太は幼稚園の頃から“おじいちゃんはぼくに勝てない”と言っていました(笑い)。小学校に入ると聡太は学校が終わるとすぐウチに来て、将棋の本を見ながら棋譜を並べて、ひとりで研究するようになった。おじいちゃんは聡太がいつ来てもいいように毎日毎日、将棋の駒をきれいに磨いていました。本当に嬉しそうでした」(育子さん)

 だが、祖父は孫のプロデビューを見ることなく、昨年2月にがんで他界した。

「長く体調を崩していたわけではなく、本当に急でした。聡太はおじいちゃん子だったから、とても悲しんでいました」(育子さん)

 祖父の死を乗り越え、2016年10月に史上最年少でプロ入りした藤井四段は、連戦連勝。だが、決して天狗にならなかった。

「小さい頃から『勝っておごるな、負けてくさるな』『実るほど頭を垂れる稲穂かな』と聡太には言い聞かせていたんです。いくら将棋が強くても、謙虚さを忘れたらダメです。私は古い人間だから、そんなことばっかり言っちゃうんです(苦笑い)。でも聡太はちゃんと聞いていましたよ」(育子さん)

※女性セブン2017年7月20日号

関連キーワード

トピックス

70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
イスラエルとイランの紛争には最新兵器も(写真=AP/AFLO)
イスラエルとの紛争で注目されるイランのドローン技術 これまでの軍事の常識が通用しない“ゲームチェンジャー”と言われる航空機タイプの無人機も
週刊ポスト
一家の大黒柱として弟2人を支えてきた横山裕
「3人そろって隠れ家寿司屋に…」SUPER EIGHT・横山裕、取材班が目撃した“兄弟愛” と“一家の大黒柱”エピソード「弟の大学費用も全部出した」
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《模擬店では「ベビー核テラ」を販売》「悠仁さまを話題作りの道具にしてはいけない!」筑波大の学園祭で巻き起こった“議論”と“ご学友たちの思いやり”
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン
5月6日、ニューメキシコ州で麻薬取締局と地区連邦検事局が数百万錠のフェンタニル錠剤と400万ドルを押収したとボンディ司法長官(右)が発表した(EPA=時事)
《衝撃報道》合成麻薬「フェンタニル」が名古屋を拠点にアメリカに密輸か 日本でも薬物汚染広がる可能性、中毒者の目撃情報も飛び交う
NEWSポストセブン
カトパンこと加藤綾子アナ
《慶應卒イケメン2代目の会社で“陳列を強制”か》加藤綾子アナ『ロピア』社長夫人として2年半ぶりテレビ復帰明けで“思わぬ逆風”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《2人で滑れて幸せだった》SNS更新続ける浅田真央と2週間沈黙を貫いた村上佳菜子…“断絶”報道も「姉であり親友であり尊敬する人」への想い
NEWSポストセブン
ピンク色のシンプルなTシャツに黒のパンツ、足元はスニーカーというラフな格好
高岡早紀(52)夜の港区で見せた圧巻のすっぴん美肌 衰え知らずの美貌を支える「2時間の鬼トレーニング」とは
NEWSポストセブン