まず「支那そうめん」という謎素材が突如現れる。紙面では「近頃は支那さうめんという新しい材料もありますから」とあるが、どんな素材か特に説明もない。
しかも書かれているレシピも謎めいている。「今食べるなら油で揚げてソースをかけても中々結構です」とある。「今」とはいつだ。どんなソースなのか。かた焼きそばのような麺か。ならばやはり中華麺か。と思いきや「季節の魚と一緒に蒸してもいい」「酢の物にしてもよい」「相当に滋養もありますから」などやたらと展開したがる。
そもそも見慣れぬ素材を扱うにあたり、素材の特徴を紹介もせず、微妙な調理法を次々に紹介するあたり、このレシピ企画自体の精度も微妙だ。そして後にも先にも朝日新聞の紙面で「支那そうめん」という言葉が登場するのはこれ一度きり。どうにもこの企画自体が、その後の日本を覆う不穏な空気を暗示していると言ったら言い過ぎか。
言い過ぎである。そして、戦中戦後のそうめん史についてはまた次回に。