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医学界に衝撃与えた論文 胃薬の長期服用が死を招く

胃薬に関する論文が医学界に衝撃を与えた

 今年6月、ある身近な薬に関する論文が医学界に衝撃を与えた。胃の痛みや胸やけなどの代表的な処方薬である胃薬の長期使用が死を招くというのだ。

 ワシントン大学の研究者が退役軍人の薬剤処方記録を用いて、胃酸抑制効果の高い「プロトンポンプ阻害薬」(PPI)を処方された約27万人と、市販の胃薬に使われる「H2ブロッカー」を処方された約7万人を追跡調査した。

 するとPPIを服用した患者が服用後から5年間で死亡する割合は、H2ブロッカーの患者に比べて25%高かった。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師の話。

「PPIの胃酸抑制効果は、H2ブロッカーより強く、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、抗凝固剤を使う患者の消化管出血予防などに幅広く使われます」

 だが一方、胃酸を強力に抑制することにより、胃の中の殺菌力が低下するともいわれている。

「胃の中で細菌が繁殖しやすくなって感染症にかかったり、細菌の逆流によって誤嚥性肺炎を招く怖れがあります。また、胃酸の分泌が低下するとカルシウムの吸収力が落ちるため、骨粗鬆症を引き起こして骨折をするリスクが上がるともいわれている。さらに、メカニズムは不明ですが、急性腎障害を起こす可能性も指摘されています。高齢者がPPIを長期的に利用することは避けるべきです」(石原医師)

 具体的には、どれくらいの期間の服用が目安なのか。

「一般的な胃潰瘍の場合、PPIを服用すれば2か月程度で回復します。それ以上服用が続いている場合には医師に服用中止を相談すべきです」(石原医師)

※週刊ポスト2017年8月4日号

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