そして二〇一七年。主人公は記憶を失ったまま、ある病院で女性医師の治療を受けている。なんとか記憶を取り戻そうとするが、どうも彼の記憶が戻るのを警戒しているある勢力がいることが分かってくる。彼らは事故の真相が分かると困るので彼を監視する。
パニック小説、サスペンス小説であり、政治小説でもある。とくに事故後の混乱の様子は、3.11を知っている日本の読者には他国の出来事とは思えない。第四原発は台北の近くにあったため、政府は首都を南の台南に移す。台北をはじめ、台湾北部の住民を南へと疎開させる。町が次々にゴーストタウンになってゆく姿は不気味。台湾が民進党の蔡英文総統の下で、脱原発を宣言したのもこの小説を読むと理解出来る。
※週刊ポスト2017年8月4日号