当時は甲子園球場の外野にラッキーゾーンが設けられ、そこにブルペンがあった。控え投手が登場すると、「投げんでええ。お前が出たら負けるがな!」と厳しい“声援”も日常茶飯だったという。
対照的に、今季のヤクルトのファンから「清宮のほうが神宮に客を呼べるんじゃないのか!」といったヤジは聞こえてこない。
むしろ温かささえ感じられる。6月24日の横浜戦ではリーグ最速の40敗目となったが、敗色濃厚の9回二死、スタンドからは期せずして球団の応援歌「今ここから」の大合唱が始まった。
阪神で1985年の日本一を経験し、2004~2008年に監督を務めた岡田彰布氏はこういう。
「今は、ファンもマスコミも優しいな。暗黒時代の阪神では、札幌遠征で負けが続くとスポーツ紙が当時の細川たかしのヒット曲になぞらえて“北墓場”と茶化しよって、それを読んだファンが球場でヤジる。ホンマにきつかった」
ただ、「高校球児に負けるんじゃないかという罵声が刺激になって、何くそと頑張れましたよ」(遠山氏)という側面も見逃せない。むしろ、ヤクルト、ロッテのファンは、球場で心を鬼にしたヤジを飛ばすべきではないのか。江本氏はこう断言する。
「今のヤクルトもロッテも暗黒時代の阪神より負け方が酷いですよ。さすがに弱い時のタイガースも、ここまでの連敗はしていませんでしたからね。いっそ本当に早実と対戦して、清宮君にホームランを打たれる方が、目が覚めるんじゃないでしょうか」
夏の甲子園は8月7日に開幕する。負けたらもう二度と同じチームで戦えないという張り詰めた空気。弱小プロ球団の選手たちにはどう映るだろうか。
※週刊ポスト2017年8月11日号