元会社役員の70代男性Cさんは同い年の妻が軽度の認知症とわかり、家に帰る気持ちを失った。
「親族から“伴侶なら一生面倒をみるべき”といわれたが、どんどん自分の知っている妻ではなくなっていく。ヘルパーさんに任せられるレベルだから、昼から外をブラブラしています」
病の克服は容易ではないが前出の宮本氏はこうアドバイスする。
「帰宅が怖くなるのは、“定年後は家にいるべき”という固定観念も一因。アルバイトを始めるなど、社会と接点を持って居場所を探すと、夫婦関係も改善することが多い。実は夫が家にいることが、妻のストレスである側面もあるのです」
妻と会う時間を削るために仕事を探す──寂しい対症療法に思えるが、前出・土屋氏も同意する。
「定年後の夫婦円満の秘訣はなるべく接触しないこと。私は家でテレビを見る時も、ヘッドホンをつけて妻の邪魔にならないようにしています。尊敬できる相手でも、ずっと一緒にいると粗が目に付いてくるものです」
その諦念が一番の特効薬か。
※週刊ポスト2017年8月11日号