「白血病などの『血液がん』に有効ということは、脳腫瘍や肺がん、乳がんなどの『固形がん』にも大きな効果が期待されます。すでに複数の製薬会社が固形がん治療のための研究を進めていて、次々に実用化される見込みです」(室井さん)
なんだか大手術が必要な気もするが、実際の治療はいたって単純だ。
「まずはがん患者の腕から血液を採取し、T細胞だけ取り出します。そして、10日ほどかけて遺伝子改変処理を施して、再び患者の体内に戻します。その後は、およそ1か月は入院するなどして様子を見る必要があります」(室井さん)
そう聞けば誰しも受けたいと思うところだが、高いハードルがある。治療費の問題だ。イギリスの薬価設定機関が今年3月に試算したCAR-T療法の値段は、1人あたりなんと7000万円以上。米投資銀行のアナリストは5500万円と推定している。
「患者1人ひとりの血液を使ってオリジナルのキメラ抗原受容体T細胞を作らなければいけないので、製造のための設備代や人件費、技術料がかかります。万人に使える薬剤とは違い、大量生産できるようなものではないので、今後はいかに値段を低くするか、企業間の競争が進むでしょう」(室井さん)
「キメラ」を安く飼い慣らすための技術革新が切実に待たれる。
※女性セブン2017年8月17日号