リストには含まれていないが、降圧剤の中でも一番の売れ筋である「ARB」(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)についても、高齢者にとってメリットは限定的だとの指摘がある。前出・石原医師がいう。
「ARBは、高尿酸血症や糖尿病を誘発・悪化させる副作用のある利尿薬より非常に副作用が少ない。ただし、高齢者に向いているとはいえない。『アンジオテンシンII』というホルモンに直接作用し血圧を下げる仕組みなのですが、このホルモンは高齢になると分泌が減ってしまう。それゆえ、ARBは中年にはよく効くものの、60代後半より上の世代には効きにくい」
イタリアの複数の認知症クリニックの研究によれば、降圧剤で血圧を無理に下げ過ぎると認知症の進行を招くとのデータも指摘されている。過度な高血圧予防は、高齢者にとって思わぬ逆効果となりかねない。
※週刊ポスト2017年8月18・25日号