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リア充代行業者サービス誕生背景に「モノよりコト」文化

幸せの象徴は「モノ」から「コト」へ変化(写真/アフロ)

 SNSにアップして「いいね!」をたくさん獲得するための「リア充代行業者」に全国から依頼が殺到している。スタッフ1人2時間8000円で派遣するような代行業者もある。サプライズ誕生日パーティをリア充代行業者に依頼し、その様子を公開するとSNSで通常の50倍以上の「いいね!」が付いたなど、その効果は確かなようだ。なぜ多くの人々がそこまで「いいね!」に執着するのか。

 若者の生態を研究する博報堂若者生活研究室の原田曜平さんは、「SNSの普及と連動する」と指摘する。

「SNSの登場で、現実の自分とは違う、他人からうらやましがられるような、背伸びした写真を投稿できるようになった。しかもSNSでは『いいね!』やフォロワーの数が掲示されて投稿者の“リア充序列”が見えるので、多くの若者がより多くの『いいね!』を求めて、投稿写真を“盛る”ようになりました」

 だが自力で“盛る”には限界がある。そこで登場したのが冒頭のリア充代行業者だ。理想の自分になるためにお金を払うサービスである。

 若者の文化に詳しい関西学院大学社会学部准教授の鈴木謙介さんは、リア充代行業者サービスの依頼者に友達がいないというのは誤解だという。

「友達がいなければSNSに上げても誰も見ません。むしろ昔からあるような、“見栄を張りたい相手”がいるからリア充が成り立つんです」

 実はここ20年ほど前から若い世代を中心に、「友達がいないことより、友達がいない人と思われるのが怖い」という風潮が強くなったと鈴木さんは指摘する。

「例えば、ひとりでご飯を食べるのは平気だけど、ひとりでご飯を食べる寂しい人と思われることが怖い。昔は恋人の有無でしたが、今はたくさんの友達が周りにいないと、生活が充実しているとみなされません。『寂しい人だ』と思われることを恐れる風潮が強くなっています」

 実際、35才前後の女性がターゲットの女性ファッション誌『Domani』2016年5月号では「『幸せそう』って思われたい!」という特集が組まれている。この特集の読者アンケートでは、「幸せそうと思われたい」という女性が93%に達した。こうした現状について鈴木さんは、「最近は幸せの定義が変わった」と指摘する。

「昔は高級車やブランド品が幸せの象徴でしたが、不景気が長く続いた間に、高価なものや消費に対するあこがれが薄れていった。今はリア充に象徴されるように、友達の多さや家族との触れ合いといった『私生活の充実度』が重視されます。幸せを測るモノサシが『モノ』から『コト』に変わりました」

※女性セブン2017年8月24・31日号

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