犯罪を防ぐには、被害の実態だけでなく、加害の深層も知るべきだと言われています。大塚さんが言うように、加害者も生まれついての犯罪者ではなかったはずです。ですが、どこかで変わってしまう。その変わる兆候、犯罪に至る前触れのようなものを察することができれば、被害はぐんと減ると予想されるからです。
犯罪対策ではなく、大塚さんは好奇心と探究心が強かったため、加害者はなぜ、自分を襲ったのかを考え続けました。加害者がしたことは紛れもない犯罪で罰を受けるべき事実ですが、大塚さんは長い年月をかけて被害だけでなく加害者のことも考え続けた結果、「赦す」ことができると思えるようになったと話します。もちろん、赦さないことも生き方のひとつではありますが、大塚さんは赦すことを選びました。
大塚さんの思いは、『よわむし』と共に世界に広がって、出版後には、男女問わず全国から共感や悩みの声が手紙が届くようになりました。
「AV女優になったからいまがあるので後悔はしていないけど、もし私と同じ境遇の人がいたら、自分のような無茶はしないでほしいです。被害に遭ってAV女優になったころ、最悪の状態だった私は、普通に生きてゆける未来はあるのかと絶望していました。あの頃の私にもし言葉が届くなら『その状態は、PTSDはいつか抜けられるよ』と伝えたい。依存症もあったので私は時間がかかったけれど、かつての私と同じように苦しんでいる女の子には、必ず終わる日がきてよくなると伝えたい」
大塚さんは弱さや傷を抱えるすべての人の幸せを願っています。