国際情報

釜山の若者との対話【第2回】高層ビル群がもたらす環境悪化

釜山の高層ビル群

 ジャーナリスト・森健氏は韓国の中高生の前で講演するために、7月に韓国・釜山を訪れだ。その模様を3回に渡ってお届けする「ジャーナリストレポート・釜山の若者との対話」。第2回は「釜山の光と影」。格差社会が広がる釜山との街とその背景を紹介する。

 * * *
 遠くから見れば、光に輝いて乱反射が激しい。まるでいつか描いた“未来社会”のようにも見える。今年7月、講演で訪れた釜山の新しい中心地、海雲台(ヘウンデ)地区は輝くような高層ビルが乱立していた。

 この周辺には、50階建て以上のビルが20カ所以上あり、そのうちもっとも高いビルは80階を超える。日本でもタワーマンションは人気だが、高さでも、開発規模でも、釜山は比較にならない激しさだった。当然、価格も階数に比例するように高い。

「上方階? だとすると、数億円はくだらないな。買っているのは、年収レベルで言うと4000万円以上。職業で言うと、医者や弁護士、それと外資系など有力企業の社員もいる。まさに格差の象徴があの高層ビル群なんだよ」

 近くを車で通りながら、季刊誌「INDIGO」の編集長、パク・ヨンジュンが教えてくれた。

 こうした高層ビルがヘウンデ地区に乱立的に建てられるようになったのは2000年代に入ってからのことだという。「韓流」の名のもと、映画や音楽など文化産業にも大きな投資がなされている頃で、ヘウンデ地区には「映画の殿堂」という映画振興の施設や大型コンベンションセンターの「釜山国際展示場(Bexco)」、世界最大のデパート「新世界」などが競ってつくられた。そうして林立する高層ビルの中には、米大統領の所有する「トランプワールド」という高層ビルもあった。運転席から指差しながら、ヨンジュンが言う。

「あんなのまったくうれしくない。トランプワールドって……悪い冗談のようだよ」

 ヨンジュンはそう言って困ったような顔をした。ひと昔前にはヘウンデ地区で最大だったというロッテデパートは、現在見るとマンションの中のアパートのようにも見えた。

 そんな商業地区から数百メートル離れたところに立つ高層ビル群は、気象的な変化も引き起こして社会問題にもなっているという話だった。

 突然つくられた高層ビル群のせいで、海からの風が陸地に入ってこなくなり、夏は気温が以前よりも高くなった。また、その高層ビル自体が熱をもっているために、そこで留まった空気が水分を含んで滞留し、ビル群を覆う雲のようになる現象が起きている。

「おかげで曇りが多くなった。高層ビルの人たちにとっては、上の階の人は朝の時間は雲しか見られなくなってる」

 そんな風景は翌朝見ることができた。

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン