◆17か所13か所が賊軍地域
現在、日本国内に原発は17か所54基ある。現在原発が置かれている場所と、戊辰戦争で賊軍とされた旧幕府軍側だった藩のある県を照らし合わせると、実に13か所46基の原発が「賊軍」地域に所在する。確かに「原発は賊軍地域に立地している」事実はあるが、なぜ原発は賊軍側に集中しているのか。
今回、原発を抱える十数か所の県庁、市町村役場の原発関連の担当課など、現地の原発建設の経緯を知る人に原発立地の事情を聞いたところ、地元が原発を誘致する理由として経済問題を挙げた回答が多かった。逆に、「賊軍地域との関係」という点に関しては、「初めて聞いた」(福島県庁企画調整部エネルギー課)、「考えたこともなかった」(青森県六ケ所村原子力対策課)という答えがほとんどだった。
青森大学の前学長で、内閣府原子力委員会の委員も務めた末永洋一氏に、原発を誘致した青森県の事情を聞いた。
「近代以降、東北は開発から取り残されてきました。そこで農業に活路を見出そうとするも、大正2年の大凶作で頓挫しました。昭和になって北村正哉知事のときに、産業の高度化を打ち出し石油コンビナート建設計画がありましたが、それも第二次石油ショックの影響で立ち消えになり、5000ヘクタールの土地が取り残されてしまった。
そこへ原発誘致案が浮かび上がってきたのです。原発ができれば、出稼ぎや集団就職が不要になり、中央との経済格差を是正できる。もちろん、反対する人は当時もいたけれど、基本的に地元が望んで誘致したんですよ」
中央から、あるいは電力会社から押し付けられたという意識はないようだ。