◆上から目線の「助けてやろう」
原発立地には、地理・地形的な条件をクリアした土地を、電力会社が地元に打診するケースと、地元自らが誘致するケースがあるという。福島は地元が誘致した経緯があるが、その状況を内田氏はこう述べている。
〈それは地元に産業がないからでしょう。産業がないのは福島県人の自己努力が足りないからじゃなくて、戊辰戦争以来150年間の、東北に対する政治的・経済的な制裁の結果なんですよ〉
当時の賊軍への差別的扱いの「結果」として現在の状況があるということか。原発地域の当事者たちの話を聞こう。柏崎刈羽原発が立地する新潟県柏崎市役所防災・原子力課の担当者はこう語る。
「明治新政府の首脳の地元(官軍地域)が発展して、他は開発から取り残されたと考えられなくはない。どうやって経済格差を是正するのかを考えたときに、原発立地が視野に入ってきたということでしょうかね」
同じく女川原発が立地する宮城県女川町企画課の担当者は、「結果的に経済発展しなかった場所が、原発立地の条件、つまり広い敷地があって人口が少ないところにちょうど当てはまってしまった、という見方もできなくはないのかなと思います」と語った。
なぜこのような構造が出来上がってしまったのか。作家の加来耕三氏が歴史的観点で語る。