次に犠牲になったのは、息子が友達からもらってきた、ハムスターでした。飼い始めて1週間がたった頃、あの鳥の鳴き声がまた聞こえてきたのです。その途端、ぐらりと家が揺れました。震度4の地震だったのですが、安普請の建物だったため、揺れもひどく、居間にあった小さな棚が倒れ、たまたまそこにいたハムスターを直撃。下敷きとなって死んでしまいました。さすがに私たちも、ペットの死にその鳥が関係しているのだろうと、生き物を飼うことをやめました。そして2年が過ぎ、私たちの中ではすっかり鳥の存在を忘れていたのです。

 しかし、今年のお盆、再び姿を現したのです。それは午後11時を過ぎたあたりでした。さあ、寝ようと思った矢先、突然、バタバタという音がして、「クエー、クエー」というあの鳴き声が!!

 まさか、生き物は何も飼っていないのに、なぜ? 私たちは恐る恐る窓を開けました。

「クエー」

 あの鳥が慰霊碑のところにとまっています。そしてゆっくりとこちらに向けた顔を見ると、鳥なのにくちばしらしいものがありません。その代わりにすっと鼻が長く伸びていて、まるで年老いた人間の顔のよう。

「なんなんだ、あれは…」と、夫がつぶやいた途端、夫の携帯電話が鳴りました。着信の相手は夫の姉です。

 電話に出た夫は、しばらく絶句した後、うなだれたように「わかった」と小さくつぶやきました。夫の父が風呂場で倒れ、救急車で運ばれたものの、病院に着くなり息を引き取ったというのです。

 義父の葬儀は、私たちが住むお寺で行うことにしました。そして、葬儀後、私たちはお寺の住職にあの鳥のことを聞いてみたのです。

 すると住職は一瞬、言葉を失い、「出たんですね…」と静かに手を合わせました。

「私は見たことがないのですが、先代からよく聞かされていました。生き物が命を落とす時に、それを食らうために来る鳥がいると…」

 そう、あの鳥は、命を食らうのが嬉しくて、嗤っていたのです。

※女性セブン2017年9月7日号

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