名物皮くじら(写真右)やスパゲッティサラダ(写真手前)などが人気のあて
立ち飲み処に設えられた安定感のあるV字型カウンターに肘をついて、PRディレクターのように語るのは、カナダ出身の男性。
「日本に来て27年になります。こんな立ち飲み文化は日本独特でしょうね。僕は大好きですよ。集まるのは楽しい人ばかりだし、お酒も料理もおいしいもの」(50代、企業紹介業)
「杜氏ではないんだが造り酒屋でずっと働いていた男です。酒造りはやめたが、酒飲みは続けてる。(笑い)そんな自分がここに通うのは、いい酒、うまい料理ばかりだからなんですよ」(60代、元酒造業)
大通りを挟んで向かい側には、東山商店街など3つの商店街と2つの市場が湊川の駅まで続いている。観光名所でもあり、三ノ宮や元町の鮨店主たちが食材を探しにやって来る、「神戸の台所」とも称される場所でもあるのだ。
「うまい酒を飲んでもらうなら、そこで仕入れた新鮮な食材を使って、うまい料理も提供したいと思って、必要な免許や資格をしっかりと取りました」(大櫛さん)
つまみや一品料理の評判がえらくいいのは、そういうわけがあったのだ。
「ここのつまみを味わいたくて来る客も多いよね。特に皮くじら。黒い皮とこれについている脂肪の部分を、わさび醤油で食べてごらんなさい。言葉が見つからないうまさですよ。いつも一生懸命で、忙しく動き回っている彼を見ながら飲んでいると、申し訳ないけど、うれしくなってしまうんです」(50代、水産業)
「そのうまいあてにぴったり合うのが焼酎ハイボールですよ。甘くないのが想定外の驚きで、飲みごたえがある。よくぞこれだけの酒をつくってくれたなと思いますね。レパートリーにこれが加わったことで、私にとって飲むことは喜びであり、生きがいであるということが一段とはっきりしてきました」(60代、数学教師)
飲むことはもちろん、食べるのも、そしてここで語り合うのが楽しいと、常連客が今宵もまた集まっている。