つねに目標があるということ。負けるもんか!と踏ん張れるようになりました。これも渡辺さんはじめ、みなさんのサポートのおかげです」

 ハーフマラソンから始めた佐矢野さんだったが、軽量の体をより生かせると思い、3年前に100m競技に転向。ウエイトトレーニングで上半身も徹底的に鍛え、現在、90kgのウエイトを持ち上げるという。

 ただ…と渡辺さん。

「クソまじめなんですよ、こいつ。練習は一生懸命するし走りもきれいなんだけど、ワイルドさが足りないんだよなあ。人を利用して欺くずる賢さがなきゃ、世界の強豪には勝てない」

◆下半身不随になって、「じゃあ、車いすで走ろう!」

 フルマラソンの選手、河室隆一さん(44才・写真左)は6年前に建築現場で木材が崩落。背骨を複雑骨折、下半身不随となった。しかし、河室さんはここからがすごかった。

「事故に遭うまでマラソンやってまして、さて、自分の足では走れなくなったと。じゃあ、車いすで走ればいい!って思って。健常者の頃から車いすレースのことは知っていましたしね。ホンダ太陽へはリハビリ室で紹介してもらって5年半前に入社しました。で、アスリートクラブのことを知って、もうここに入るしかないだろうと思いまして、毎日仕事が終わってから必死に練習しました。3年かけてようやく所属選手になったんです。今、午後は全部走っていられる。レーサーはスピードが出るし、風を切るあの感覚がたまらないです」

 むちゃくちゃ嬉しそうに河室さんが笑った。

「だって、生きてるんですから。足が動かなくたってできることあるよね、って。ただ、センスないんで(笑い)、人よりがむしゃらに練習して、研究するしかないんですけど。毎日?㎞は走ってます」

「そのくせ本番に弱いんですよ、こいつは。練習バカです」

 一同、大爆笑となった。健常者も障害者もない。そこには、自分の可能性に挑戦し、人生をフルで楽しむアスリートたちの姿があった。

撮影/川口賢典

※女性セブン2017年9月14日号

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