お父さんに自分の判断で遺言をする能力(遺言能力)があれば問題なくできます。公正証書遺言でも、公証人が筆記した遺言内容を読み上げ、正確であることを確認した後、本来であれば遺言者本人と証人が署名押印し、最後に公証人が署名押印して完成されます。

 また、遺言者が署名できない場合、公証人がその理由を書くことで署名を省略できます。そこで、お父さんが、口頭で遺言内容を公証人に伝えることができれば、この方法で遺言できます。具体的には公証人役場に相談してください。

 なお、仮に口がきけない状況だと、上記の口授ができません。その場合でも、通訳人を介して公証人に遺言内容を伝えることができれば作成は可能です。この通訳人とは、一般的には手話通訳でしょうが、手話ができない場合でも、読唇など、その他の方法で意思の伝達が可能であれば通訳になると解されています。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年9月15日号

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