モノより体験を売りたいと語る寺尾玄社長(撮影:内海裕之)
◆地面と自分さえいれば、最終的に大丈夫
──新しい商品を発表されたばかりではありますが、次の商品の予定は決まっていますか?
寺尾:来年発売に向けて準備を進めている商品が2つあります。アイディアはいくらでもあるので、それを商品という形に落とし込んでいく作業を進めています。
私は、会社でいちばん重要なのは「商品」だと考えているんです。会社のリソースは人、モノ、金とよくいわれますが、私は商品が第一。いくら資金があっても、いい人材がいても、商品が生まれなければ意味がないでしょう。商品だけが会社を次のステージに連れて行ってくれるし、大きなピンチを切り抜けさせてくれる。素晴らしい商品を社会に提供できれば、それだけで、会社の状況はガラリと変わってしまうんです。
──実際に、バルミューダはピンチのときに、大ヒット商品を生み出してきました。ピンチにおいて最大の力を発揮するのは、自著『行こう、どこにもなかった方法で』(新潮社)に書かれているような社長の人生経験や人柄に拠るところもあると感じます。
寺尾:私、ピンチになると、ものすごくやる気が出るんですよ(笑)。ファイトが湧いてくる。これは親からもらったギフトだろうと思いますね。もうひとつ、高校を辞めて行ったスペインの旅で、自分を信じられる力を得たと思います。地面と自分さえいれば、最終的に大丈夫。金がなくたって、生きていける。そういう確信を得たことは、大きかったと思います。
※【後編】では、寺尾社長の背骨を作ったご両親の教育や若き日の旅について、また、今後の会社の方向性についてお届けします。
◆寺尾玄(てらお・げん)
1973年生まれ。17歳の時、高校を中退し、スペインをはじめとする地中海沿いを放浪する。帰国後、音楽活動を開始。2001年、バンド解散後、ものづくりの道を志す。工場に飛び込み、設計、製造について独学で習得。2003年、有限会社バルミューダデザイン設立(2011年4月、バルミューダ株式会社へ社名変更)。同社代表取締役社長。著書に『行こう、どこにもなかった方法で』(新潮社)がある。