マンモグラフィーの激痛が辛く、足が遠のきがちな乳がん検査。本誌読者410人に行ったアンケートによると、乳がんのマンモグラフィー検診を受けたことがある人のうち、312人が「痛いと感じた」と回答。また、245人が「痛みをがまんして検診を受けている」と答え、「痛みを感じたので、その後は検診を受けなかった」と答えた人は69人という結果が出た。
そんな中、9月4日、画期的な乳がん検査装置が発売された。その名も『エルマンモ アヴァン クラス』。島津製作所から発売されたこの新装置は「痛くない」のだという。ただし、どこの病院にも置いていないため、受けることができるのは前身機の『エルマンモ』。費用も高額で、導入している所沢PET画像診断クリニックでは人間ドックのオプションで全身PET/CT検査7万円に、乳房PET検査を3万2400円でつける形。保険も適用外だという。
◆360度からの超音波で初期の小さながんも見逃さない
「痛くない乳がん検査」に尽力する企業は他にもある──
今年5月、日立製作所は360度の方向から超音波を当てて、腫瘍を高精度に計測できる『超音波計測技術』を発表した。
すでにがん疾患動物での試験で5mmの腫瘍検出に成功。発表前の4月から北海道大学病院と共同で、人の臨床試験の準備も開始しており、1920年の技術の確立を目指している。
日立製作所研究開発グループ基礎研究センタ・川畑健一主任研究員は「簡易で、痛みの伴わない、精度の高い検査を将来可能とする技術です」と胸を張る。
「穴のあいた検査台の上にうつ伏せになっていただき、水を満たした検査容器に乳房を入れるだけです。一般的な超音波検査と違い、360度の角度から超音波を照射することで、腫瘍の硬さや表面の粗さといったさまざまな特性を計測でき、初期の小さな腫瘍の検出が期待されます」
超音波を用いるため、マンモグラフィーやPET検査と違い、放射線により被曝するリスクもない。
医療ジャーナリストの田辺功氏が言う。
「誤診や痛みが原因で検査を避ける人がいるなど、乳がん検査は多数の課題を抱えています。そんな中で、精度が高く、痛みもない検査方法が出てきたことは革新的です。
しかし、新しい検査方法はデータの蓄積や実績に乏しいため、まだ有効性が認められない状態にある。今後、開発や研究が進めば保険適用される可能性もあるでしょう。
実際、2013年にはインプラントによる乳房再建手術が保険適用されるなど、乳がん医療の現場は日々進歩しています。ただ、どんな検査でも見落としはある。普段からセルフチェックをすることも大事です」
日進月歩の乳がん医療。これらのすばらしい技術を誰もが気軽に受けられる社会づくりが待たれる──
※女性セブン2017年9月28日号