あれから50年も経ったのに、介護殺人は後を絶たない。政府は介護離職ゼロなどと耳障りのよいスローガンを打ち出しているが、本当に解決する気があるのか、本気が見えない。政治家も、官僚も、正論を言っているだけのポジショントークに思えてならないのだ。
それならいっそ、AIに任せてみたらいい、とさえ思ってしまう。だが、AIに任せてしまったら、公平で統制された社会になるかもしれないが、そこで人間が幸せに生きられるのかはわからない。
AIは、あくまでも道具にすぎない。AIがはじき出した答えを、ぼくたち人間がどう解釈し、選択し、決定していくかが大事なのだ。
服従者にならないように、いつも勇気をもっていること。自己決定すること。強い人のためではなく、弱い人の視点でジャッジするようにすること。少なくともそんな視点を持ち続けながら、AIよりもいい選択ができるようにしたい。
●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に、『検査なんか嫌いだ』『カマタノコトバ』。
※週刊ポスト2017年9月29日号