高額な先進医療の費用は、がん保険の先進医療特約に加入していたため、その他の実費だけで済んだ。
「若い頃は煙草を1日100本、酒も毎日浴びるほど飲んでいた。今は身体のために、家では玄米しか食べさせてもらえません(笑い)。だから、仕事先で白米のごはんが出ると、とても幸せな気分になるんです。その美味いことといったら、言葉になりません」
村野氏はがんを患った時、役者という仕事ゆえ、死よりもセリフが言えなくなること、つまり声を失うことが怖かったという。それが杞憂に終わって受けた仕事が、9月末のCDデビューだった。
大病から生還した村野氏は、万感の思いでこう語る。
「1人の医師が匙を投げたぐらいで絶対に諦めてはいけません。粘り強く、自分に合った病院を探すことが重要です。セカンドオピニオン、サードオピニオンの大切さなど、今後も自分の経験を伝えることで、がんと闘う人々にエールを送り続けたい」
言葉に力がこもった。
●むらの・たけのり/1945年生まれ、東京都出身。早稲田大学商学部卒業。劇団文学座を経て1969年、NHKドラマで主演デビュー。俳優業のほか、歌手としても活動。9月に新曲CD『ハマナス』をリリース。
※週刊ポスト2017年10月13・20日号