これまで、この種のスタートアップ企業は、いささか胡散臭い目で見られることが多かった。価格が高い、航続距離が短い、充電インフラが足りない等々のマイナスイメージがユーザーサイドに強かったこともあるが、非現実的な構想を打ち上げる事業者側にも多分に問題があった。
たとえばGLMと同じ京大発ベンチャーであるナノオプトニクスエナジーは、鳥取の日本たばこ産業の工場跡地を利用してEVおよびエネルギーソリューションビジネスを展開すると大風呂敷を広げたものの、ほとんど何も出来ないまま事業展開を事実上打ち切った。
普通のクルマをEVに改装するビジネスを展開していたゼロスポーツは日本郵政から1300台のEV改装を受注したが、これまた実行できないまま破産。バッテリーベンチャーも似たりよったりである。
こうした失敗事例ばかりが積み重なり、成功例がほとんどないことから、日本ではEVビジネスのスタートアップについては、ステークホルダーがアレルギー反応を示す傾向が強い。現在立ち上がっているビジネスはもう少し堅実性があるが、それでも事業のサスティナビリティについて疑念を持つ声も少なからず聞かれる。
日本はEVの技術については世界最先端レベルにあるにもかかわらず、EVがいまひとつ盛り上がらないのは、環境・エネルギー問題は何でもかんでもEVにすれば解決できるというものではないということを多くの人がちゃんと理解していることの裏返しでもある。
だが、一方で、世の中にはやってみないとわからないことがたくさんあり、今の常識に従っているだけでは物事が前に進まない。その日本で多様化するEVがカスタマーや社会にどういう形で受け入れられていくのか、またどういう新たなEVスタートアッパーが出現するかが興味深い。
●文/井元康一郎(自動車ジャーナリスト)