ライフ

【山内昌之氏書評】仏イスラム専門家による「聖戦」の実態

【書評】『グローバル・ジハードのパラダイム パリを襲ったテロの起源』/ジル・ケペル&アントワーヌ・ジャルダン・著/義江真木子・訳/新評論/3600円+税

【評者】山内昌之(明治大学特任教授)

 2015年はパリの「シャルリー・エブド」誌編集部が襲われ、サン・ドニのサッカー場で自爆事件が起きるなど、フランスにジハーディズムが根を下ろした年でもある。著者たちは、現代イスラムと投票行動の専門家として、大都市郊外の低所得者団地で移民系住民が増え続けるシテと呼ばれる地区に注目する。IS(イスラム国)は、このシテを中東のジハード(聖戦)と結びつけて、欧州でのテロを誘発させたというのだ。

 ISは、フランスの住民を出自に関わらず無差別に標的とする「祝福された襲撃」を繰り返した。ISは、移民系の住民を犠牲にしようともお構いなしであり、欧州の「柔らかい脇腹」の西欧で「万人の万人に対する戦争」を引き起こして、内戦を誘発して「カリフ制国家」を樹立しようとしている。

 ただし、この若いテロリストらは教育を受けておらず、知的水準はあまりにも低い。彼らは、欧米のイスラム嫌いから生まれた犠牲者のムスリムをジハーディストとして獲得できるという幻想に浸っている。

 こうした若者が生まれたのは、ポストコロニアル時代の移民子弟としてフランスで生まれた世代が、社会や制度との暴力的な衝突を辞さなかったからだ。その挙句に、移民子弟の若者といえば暴力の常習者と見なされる悪循環が始まった。

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト