彼らが選挙権をもった当初は、二〇一二年のオランド大統領当選のように、サルコジへの反発が強かった。いまでは、同性愛禁止やスカーフ着用などを目指すムスリムは、世俗主義のオランドたちにも寛容でなくなった。
このムスリムの若者は、社会的帰属意識からすれば左派に近いが、民族・宗教上の主張に従えば右派に接近するという屈折した構図をもち、フランス政治ではジレンマの状態にある。そのギャップを暴力的に埋めようという動機こそフランスにグローバル・ジハードを生み出したともいえよう。現代のジハーディズムにおける宗教とイデオロギーと暴力それに戦争との接点をさぐる好著である。
※週刊ポスト2017年10月27日号