所有権は近代法治国家の中でとりわけ強い権利として認められている。これを所有権絶対の原則という。日本国憲法も第二十九条一項に「〔所有権を含む〕財産権は、これを侵してはならない」と規定している。また、民法においても、所有権は消滅時効にかからない。ただし、誰か別人の取得時効が成立した場合、元の人は所有権を失うが、これは取得時効による反射的効果であって、消滅時効によるものではない。そもそもフランス革命時の人権宣言において、その第十七条に「所有権は神聖不可侵」と明記されている。
夜間異様な服装で脅迫的言辞を口にして不当な要求をするガキは、子供だからといって許しておくべきではない。これと闘うのは正当防衛であり、人権闘争でもある。先に、こんな子供を殴り倒しても、人権派の弁護士が集まって法廷闘争を支援してくれるはずだと書いたのは、このことである。
学校教育においても、これは重要なテーマになるはずだ。昨今人権教育の大切さが叫ばれている。私はそれとは別の意味で人権教育は大切だと考えるが、詳論はまたの機会に譲る。ともかくも、所有権を無視する人権侵害行為は、いじめなどより悪質であり、法治社会の完成を目指す意味からも看過できない。人権教育の授業でハロウィーンの菓子強要の反人権性を子供たちに啓発すべきだろう。ハロウィーンにはやはり悪霊が現れるようだ。
●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。
※週刊ポスト2017年10月27日号