「今のテレビ番組は、事務所に気を遣い過ぎだし、大御所には当たり障りのないことを言って穏便に済まそうとする。ロケ場所1つ撮っても、トラブルが起きないような気を遣ってばかりいる。欽ちゃんは『それじゃ何にも面白くないんだよ』と言いたかったんじゃないですか」(同前)
欽ちゃんと言えば、コント55号時代からアドリブを飛ばしまくって、相方の坂上二郎を追い込み、想定外の笑いを生み出してきた。また、60代でいきなり『茨城ゴールデンゴールズ』という野球のクラブチームを立ち上げたり、70代で大学に通ったりするなど常人には思いもつかない発想と行動力で世間を驚かせてきた。その魂は今も衰えていないようだ。
番組では授業を受けた後、食堂に行く段取りになっていたが、「俺、この番組壊しにきてるからね」と言い、予定になかった駒澤大学のミスコン出場者の自己PRをチェックしに行くことに。ザキヤマも「いやいや、食堂行きましょうよ。打ち合わせしたじゃないですか」と焦った。
番組の最後には、『欽ドン!』の名コーナー『良い子 悪い子 普通の子』で香取と2人でコントを演じた。収録から40分が経つと、萩本が「飽きたから、子供の衣装とかないかな?」と完全なアドリブを仕掛けてきた。慌てたスタッフは動物柄の短パンを香取に履かせて、何とか場を取り繕ったものの、ザキヤマが「怖い!」というように香取は明らかに変な格好になっていた。すると、香取が「おじさんが必死に脱いでいたよ」と漏らした。困った男性スタッフが自分の履いていた短パンを脱ぎ、香取に履かせていたと説明。会場は爆笑に包まれた。
「1人で段取りをぶち壊し、勝手にアドリブを入れてスタッフを慌てさせた。実は、『欽ドン!』や『欽どこ』でも散々リハーサルをしながら、本番で全く関係ないことをして斎藤清六や見栄晴などを困らせていた。それが高視聴率に繋がっていたのです。追い込まれた時に生まれる必死さによって、番組は面白くなるという原点を欽ちゃんが思い出させてくれました。予定調和になりがちな今のテレビ界へのアンチテーゼでしたね」(同前)